中国では、実店舗・ECサイト共に、モバイル決済サービスが広く導入されています。中国インバウンド施策の一環として、アリペイやWeChatペイなどのモバイル決済サービスを導入している小売店も多いのではないでしょうか。しかし、店にステッカーを貼るだけでは、訪日中国人に対して十分認知してもらうことはできません。
大切なのは、モバイル決済導入後に、プロモーションをしっかり行い、周知していくことです。今回は、WeChatペイ導入を検討したい理由と周知の必要性についてご紹介します。
1. インバウンド決済とは
インバウンド決済は、外国からの観光客が訪れた国で利用する便利な支払い方法です。このシステムは、訪問者が自国の決済方法を使って、訪れた国で直接その地の通貨を使用することなく支払いを行えるよう設計されています。日本などの観光立国において、このタイプの決済システムの導入は、観光客の利便性を大幅に向上させるため非常に重要です。
特に、アジアからの訪問者に人気のある決済方法には、WeChat PayやAlipayのようなモバイル決済です。これらは利用者が自国の通貨で支払いを済ませる一方で、受け取り側の事業者はその国の通貨で支払いを受ける仕組みになっているため、双方にとって非常に便利です。また、このようなシステムは、為替リスクを回避する効果も持ち合わせています。
インバウンド決済の導入は、特に観光地や国際的なショッピングエリアで重要です。観光客は現地での現金携帯リスクや、外貨両替の手間を省くことができるため、ショッピングや食事などでの出費が増加しています。
日本の企業がインバウンド決済を取り入れることで、訪日外国人の顧客体験を向上させるだけでなく、ビジネスの拡大にも寄与することができます。外国人観光客が手軽に決済できることで、リピーターとしての訪問や、オンラインでの口コミ拡散が期待でき、長期的にはブランドの国際的な認知度向上にも繋がります。
2. 2024年度の訪日外国人観光客の動向
2024年に入り、訪日外国人観光客の動向に顕著な変化が見られました。特にアジア圏からの訪問者数が増加しており、日本の観光業界に再び活気をもたらしています。
その中でも、中国、韓国、台湾からの観光客が大幅に増加しており、これらの国々からの旅行者は、日本の食文化、自然、歴史的な観光地への関心が高まっています。また、これに伴い、多言語対応サービスの需要が高まり、日本国内の多くの観光施設では言語サポートを強化しています。
さらに、2024年はオリンピック後の観光施策として、日本政府及び民間企業が積極的にインバウンド観光客の誘致に力を入れている年でもあります。これにより、地方都市への訪問者数も増加しており、従来の「ゴールデンルート」から離れ、地方の隠れた魅力を求める動きが強まっています。
このような増加傾向は、インバウンド決済オプションの拡充がさらに求められる状況を生んでいます。外国人観光客がスムーズに支払いを行える環境を整備することは、彼らの満足度向上に直結し、結果として消費拡大に寄与しています。デジタル決済の普及が進む中、WeChat PayやAlipayなどのモバイル決済手段を積極的に導入することが、訪日観光客からの評価を高める鍵となります。
3. 訪日インバウンド客の決済方法
訪日インバウンド客の決済方法は多様化し、日本国内で利用できる主要なインバウンド決済方法には、Alipay、WeChat Pay、Kakao Pay、LINE Pay、Japan Travel Payなどがあります。
1. Alipay(アリペイ)
Alipayは、中国を始めとするアジア諸国で広く普及しており、その利用範囲は香港、韓国、シンガポール、マレーシアなどにも及んでいます。日本では、特に中国からの観光客に向けたサービスとして、多くの商店やレストランで受け入れられています。Alipayはユーザーが自国の通貨で支払いを行うことができるため、言語の壁や為替レートの心配なく、スムーズに支払いを済ませることが可能です。
2. WeChat Pay(ウィーチャットペイ)
WeChat Payもまた、中国発の決済方法であり、そのユーザーベースは膨大です。WeChat Payはメッセンジャー機能を核とし、決済だけでなく送金や各種サービスの予約にも利用されています。日本国内でのWeChat Payの導入は、特に若年層の中国人観光客から高い評価を受けており、観光地やショッピングセンターでの利用が推進されています。
3.Kakao Pay(カカオペイ)
Kakao Payは韓国で非常に人気のある決済手段で、そのユーザーフレンドリーなインターフェースと広範な受け入れネットワークが特徴です。韓国からの観光客には馴染み深いため、日本国内の特定の地域や店舗での採用が増えています。
4. LINE Pay
LINE Payは、日本国内でも広く利用されている決済サービスであり、LINEの広範なユーザーベースを背景に、日本だけでなく台湾やタイなどでも利用されています。特に、日本とこれらの国々を行き来する観光客にとっては、非常に便利な決済手段です。
5. Japan Travel Pay
Japan Travel Payは、JTB ビジネスイノベーターズとアイ・ティ・リアライズ株式会社が提供する新しい決済サービスで、クレジットカードをスマートフォンに登録するだけで利用できる手軽さが特徴です。このシステムは、国内外からの観光客に対応し、電子スタンプを使った簡単な決済プロセスを提供しています。店舗側の導入コストが低く抑えられているため、小規模事業者にも受け入れられやすいのが特徴です。
4. WeChatペイを導入したい理由
WeChatペイ(WeChat Payment/微信支付)は、2022年5月時点で登録ユーザー数12億人超えの人気SNS「WeChat(微信・ウィーチャット)」の決済サービスです。
WeChat(微信・ウィーチャット)の利用ユーザーは、銀行情報を登録することで、決済機能が利用できるようになります。そして、WeChatペイを導入している店舗における決済やオンライン決済が可能になります。決済手続き完了後に、自分の銀行口座からお金が引き落とされる、いわゆるデビットカードと同様のしくみを持っています。
このWeChatペイを日本企業が実店舗・ECサイト共に決済手段として導入したい理由をご紹介します。
5. WeChatペイ導入だけでは不十分。やるべき施策とは?
WeChatペイ導入は、日本企業にとって積極的に検討すべきことといえます。しかし、よく陥りがちなのが、WeChatペイを導入しただけで満足してしまうことです。
導入して、店にステッカーを貼るだけでは、WeChatペイを使えることを周知するには不十分といえます。特に訪日中国人たちは、渡航前にすでに購入先の店舗を選んでいることが多いため、選択の段階でWeChatペイが使えることは、ぜひ周知しておきたいものです。
そのためには、中国人たちが日頃から盛んに情報収集に活用しているSNSである、WeChat(微信・ウィーチャット)やWeibo(微博・ウェイボー)などで情報発信し、拡散させることで広く認知してもらうのが有効です。また、SNS上でキャンペーンを行い、クーポンを配布するなどして、実店舗やECサイトへ誘導し、同時にWeChatペイが使えることを知らせる施策も有効です。
5-1. インバウンド・中国ECにおけるスムーズな決済が実現
WeChatペイで支払えるしくみを用意しておけば、訪日中国人が日本で決済をする際や、中国に住む中国人が本土で日本企業のネットショップから購入する際にスムーズに決済してもらうことができます。多くの中国人たちは、日頃からWeChat(微信・ウィーチャット)を使ってコミュニケーションなどを通じて情報収集しています。その身近なツールに付属するWeChatペイを導入することは、中国でインバウンド施策を行う日本企業や、中国ECを手掛ける日本企業にとって中国人に好印象を持ってもらえるでしょう。
5-2. 現金引き出し制限への対策としても有効
また、WeChatペイを導入したい理由として、2016年1月から海外での銀聯カードによる現金引き出し制限がかけられたことがあります。
これにより、中国へ日本の商品を代わりに購入して送る「代購」を行う在日中国人が、サイクルを回すのに必要な現金を引き出すのに制限がかかり、影響を受けています。こうした状況のなか、在日中国人たちが日本で現金支払いをしなくても済むように、日本企業はアリペイ決済やWeChatペイ決済など、中国預金口座から直接購入できる決済サービスを用意すべきといえます。
6. まとめ
WeChatペイは、今、最も注目すべきオンライン・モバイル決済サービスです。インバウンド、中国ECともに対応することで、中国人たちの利便性を高め、購買意欲の促進にもつながるでしょう。
ただWeChatペイを導入して終わらせるのではなく、SNSや広告などのあらゆる方法を駆使して広く周知する施策にも積極的に取り組むことが大切です。