これから中国越境ECサイトに決済手段を導入するに当たって、ぜひ知っておきたいのが中国で人気の決済手段です。特に人気なのは、第三者決済と呼ばれるAlipay(アリペイ・支付宝)やWeChat Pay(ウィーチャットペイ・微信支付)ですが、それ以外にも中国にはさまざまな決済手段があります。
そこで今回は中国越境ECの決済手段のシェアランキングをはじめ、それぞれの決済手段の特徴のほか、世界で越境EC事業を始める際の決済手段の準備方法、決済方法の選択ポイント、越境ECで決済を受ける際の注意点をご紹介します。
1.中国の越境ECで主流の決済手段
近年の中国の越境ECにおける決済手段は、次の順で人気となっています。
●越境EC利用の際の主な決済システムの利用割合
第1位 第三者決済(82.9%)
…アリペイ(Alipay/支付宝)やWeChat Pay(微信支付)など
第2位 ネットバンキング(クレジットカード、デビットカード)(65.3%)
第3位 クイック支払(53.8%)
第4位 携帯電話(52.6%)
第5位 現金引換(49.7%)
第6位 郵便局・銀行振込(14.4%)
第7位 商品券およびプリペイドカード(9.0%)
第8位 その他(0.6%)
出典:中国互聯網絡信息中心「2014年中国ネットショッピング市場研究報告」
https://www.jetro.go.jp/biz/sensor/special/2017/12/a93c240657c03189.html
約80%と圧倒的なシェアを占めているのが「第三者決済」です。第三者とは「第三者の独立機構」という意味で、その第三者が国内外の大型銀行と契約することで提供する取引支援サービスのことを意味しています。具体的にはAlipay(アリペイ・支付宝)やWeChat Pay(ウィーチャットペイ・微信支付)などを指します。
ネットショッピングの決済手段といえば日本ではクレジットカードのイメージが強いですが、中国ではこうした第三者決済が多くのシェアを誇るという特徴があります。
もちろん中国でもクレジットカードのシェアも高く、同時にデビットカードの利用も多くなっています。またクイック支払や携帯電話など手軽な決済方法が、現金や銀行振込などよりも強いのが特徴です。
2.中国の越境ECで主流の決済手段の特徴
では中国の越境ECにおける上位5位の決済手段について、それぞれの特徴をご紹介していきます。
2-1.第三者決済
先述の通り、中国で人気の第三者決済はAlipay(アリペイ・支付宝)やWeChat Pay(ウィーチャットペイ・微信支付)などのキャッシュレス決済です。
「第三者」とはAlipay(アリペイ・支付宝)を運営するアリババや、WeChat Pay(ウィーチャットペイ・微信支付)を運営するテンセントなどの企業のことを指します。
決済の仕組みを確認していきましょう。
消費者がECで商品を購入すると決めた後、第三者決済を選んで決済を行ったとします。そのとき、代金は商品を販売する店舗の口座へ直接振り込まれず、まず第三者の口座に振り込まれます。
すると、商品を販売する店舗に「振込完了」という通知が届きます。これにより店舗側は消費者から代金が支払われたことが確認できるので、店舗側が商品を消費者へ発送します。代金が第三者から店舗側に振り込まれるのは、商品がきちんと顧客に届き、問題がないことを顧客が確認し、第三者に対して「ちゃんと注文した商品が届き、中身も問題ありませんでした」という旨を伝えた後になります。
中国でこの『第三者が仲介する決済手段』が最も人気が高い理由は、トラブルが多いことが背景にあるといわれています。届いた商品が破損していたり、そもそも商品が届かなかったり、まったく異なる商品が届いたりした後で問い合わせても店舗はすでになくなっていたというケースもあり得るためです。信頼の置ける第三者機関を挟むことで安心して購入できるのが第三者決済の特徴であり、人気を集めています。
2-2.ネットバンキング(クレジットカード、デビットカード)
クレジットカードは、日本では当たり前のようにECで利用されていますが、それに比べてデビットカードは、日本ではそれほど普及していません。JCBが日本全国の20~60代の男女3,500人に対して行った2017年調査によると、クレジットカード保有率は85.1%だったのに対し、デビットカードは21.5%となっています。
一方、中国ではデビットカードはポピュラーで、主に「銀聯カード」が利用されています。中国銀聯の2016年時点の発表によると、中国国内の発行枚数はデビットカードが57億枚、クレジットカードが5億枚でした。
中国人消費者にとってクレジットカードとデビットカードは、ECでの決済に欠かせない手段といえます。
2-3.クイック支払
クイック支払とは、あらかじめ取得したアカウントに対して金融機関のキャッシュカードの番号や携帯電話番号を登録しておくことで、支払い時にパスワードと認証コードを入力すると、金融機関の口座から即時引き落としされる決済手段です。
デビットカードと同様に、ユーザーはあらかじめ金融機関の口座にお金を入金しておく必要があります。とはいえ、デビットカードは中国では広く普及しているため、クイック支払についても、慣れ親しんだ方法であるようです。
2-4.携帯電話
携帯電話を利用した支払い方法のことです。第三者決済と重複している部分もありますが、現在は携帯電話からEC購入することが多く、携帯電話で手軽に決済できることから、EC利用時には利便性の面から活用されているようです。
2-5.現金引換
現金引換とは、いわゆる代金引換、代引、着払いです。届いた商品と引き換えに、配送業者に対してその場で現金で支払う方法です。
3.中国ECで人気の決済手段
上記でご紹介した中でも、主流となっている決済手段として、銀聯カード、Alipay(アリペイ・支付宝)、WeChat Pay(ウィーチャットペイ・微信支付)の3つがあります。
これらは、中国越境ECサイトを運用する際、決済手段を選択する際には、ぜひ押さえておくべき手段といえます。
3-1.銀聯カード
銀聯カードは、先述の通り、中国では人気のデビットカードです。2018年、中国本土以外の48国と地域で発行されたUnionPay(銀聯)カードの累計発行枚数は、1億枚を突破したことが公式発表されています。
また2018年に中国銀聯(China UnionPay)が公表した取引データによれば、2017年の銀聯の決済ネットワークを介した決済額は93兆9千億元(日本円で約1,630兆円)、前年同期比28.8%増でした。
増加の背景として、銀聯Mobile QuickPass、銀聯QRコード決済等のモバイル決済が急速に普及したことが挙げられています。
3-2.Alipay(アリペイ・支付宝)
中国EC最大手のアリババグループによるモバイル決済サービスで、中国の2018年のモバイル決済金額の約4,709兆円のうちアリペイが占める決済額シェアは54%に達したといわれています(※)。
Alipay(アリペイ・支付宝)の公式サイトによると、中国消費者に最も使われているモバイル決済サービスであり、ショッピング・食事代・交通費のほか屋台での買い物やお小遣いのやりとりまで生活のあらゆるシーンで浸透しているといわれています。
※新華網ニュース (2019年3月21日)、「中国モバイル決済市場モニタリング報告書 2018年第 4 四半期」 (Analysys易観調べ、2019年3月26日)より
中国越境ECに取り組む際、まずはAlipay(アリペイ・支付宝)の導入は必須といえそうです。
3-3.WeChat Pay(ウィーチャットペイ・微信支付)
WeChat Pay(ウィーチャットペイ・微信支付)は、WeChat(微信・ウィーチャット)というSNSを提供するテンセント社によるモバイル決済サービスで、Alipay(アリペイ・支付宝)の次にシェアを占める決済手段です。
WeChat Pay(ウィーチャットペイ・微信支付)のユーザー数は非公開ですが、WeChat(微信・ウィーチャット)のユーザー数は2019年7月時点で11.18億人とされています。
利用者はあらかじめWeChat(微信・ウィーチャット)の会員となり、銀行口座との紐付けなどを行うことで、WeChat(微信・ウィーチャット)のペイメント機能を利用できます。これを用いるとECや店頭での支払い手続きが可能となります。
WeChat Pay(ウィーチャットペイ・微信支付)もAlipay(アリペイ・支付宝)同様、中国越境ECには欠かせない決済手段といえます。
またWeChat(微信・ウィーチャット)を使ったプロモーションを行うことも可能である上、WeChat(微信・ウィーチャット)内に越境ECサイトを構築するサービスもあります。WeChat Pay(ウィーチャットペイ・微信支付)と合わせて活用することで、より集客効果が期待できます。
【参考】
4.EC事業成功のための決済方法の選択ポイント
中国をはじめ、これから世界各国に向けて越境ECを始めるという事業者は、まず数ある決済手段のうち、最適なものを選ぶ必要があります。そこで越境ECを成功させるために、決済方法を選択するポイントをご紹介します。
4-1.越境ECの対象国に合わせて最適なものを選択する
先ほど中国ECで主流の決済手段をご紹介しましたが、国や地域が変われば当然、主流となっている決済手段も変わります。そのため、決済手段は越境ECの対象国に合わせて最適なものを選択することが求められます。事前リサーチを行い、消費者にとって最も便利な決済手段をリストアップしましょう。
4-2.自社に合う決済方法であるかも確認する
対象国で主流の決済手段をリストアップした後は、そこから自社にとって最適な決済手段を選ぶことが大切です。いくら主流の決済手段であっても、導入コストや手間、導入後の手数料などを総合的にとらえ、損のない選択をすることが大切です。
4-3.決済代行サービスを利用する場合は注意する
決済手段が複数に渡る場合、各種契約をまとめて一括契約して利便性を高められる決済代行サービスを利用することもできます。その場合には、信頼できるサービス事業者を選ぶのをおすすめします。実績とともにセキュリティ面も強固な事業者がおすすめです。
【参考】
5.越境EC事業を始める際の決済手段の準備方法
決済手段が決まったら、今度はその準備が必要になります。その準備方法をご紹介します。
5-1.決済代行業者と契約する
一般的に、各国の越境ECの決済代行を行っている事業者に委託します。決済代行サービスを利用すると、決済管理や売上金の出金などが手軽に行えるので便利といえます。
まずは希望の決済手段を取り扱っている決済代行サービス事業者を探しましょう。また、海外の越境ECモールを利用する際には、サービスメニューの一環として、決済代行サービス事業者としてのサービスを提供していたり、斡旋したりしている場合も多いため、先に確認しておきましょう。
5-2.決済管理を行う体制を整える
ECの運用管理体制のうち、決済管理についてもしっかりと体制を確保しておきましょう。
また、各決済サービス代行事業者によって詳細は異なりますが、通常はIDやパスワードが発行され、それを越境ECカートなどに設定して運用を開始することになります。設定や管理のできる人員を整えましょう。
【参考】
6.越境ECで決済を受ける際の注意点
越境ECの運用を始めた後、決済を受ける際には、日本での決済とは違う部分があるため、注意すべき点について、しっかりと確認しておきましょう。
6-1.為替の影響で価格が流動的であることを踏まえる
越境ECの場合、現地の通貨で販売するのか、日本円で販売するのかによって為替変動リスクを誰が追うのかが変わってきます。
例えば米国の越境ECにおいて、ドルで販売する場合、ドルで売り上げが入ってくることになります。すると、日本企業である自社が、日本円に両替する際の為替変動リスクを抱えることになります。
一方、米国の越境ECにおいて、円で販売する場合は、売り上げも円で入金がされます。これは自社にとってわかりやすくシンプルではありますが、商品を購入する顧客が為替変動リスクを負います。
つまり購入時に消費者が意図していた金額と、実際の支払額が異なってしまう場合があるということです。また顧客は、海外旅行に行って現地で物を買うのと同様に買い物をすることになります。普段から慣れ親しんだ現地通貨でないために、ハードルが上がるほか、その商品の価格が高いのか、それとも低いのかといった判断に迷うという懸念もあります。
これらの為替変動リスクについて踏まえておく必要があります。
6-2.各商品の関税見込み額を表示する
越境ECでは、物品の輸出入に際して支払う必要が発生する税金「関税」についても配慮が必要です。関税は、販売者ではなく、輸入者である消費者が支払うのが一般的です。そのため、場合によっては関税支払いのトラブルが生じる恐れもあります。スムーズな取引を行うためには、あらかじめ各商品の関税見込み額を表示するなど工夫する必要があります。
6-3.クレジットカードの限度額について留意する
クレジットカードは、海外では多くの国で主流となっている決済手段ですが、一部の国・機関が発行するクレジットカードでは、海外での決済について通常の限度額以下に設定されていることがあります。
限度額があることで購入できない消費者からのクレームなどを想定し、クレジットカード以外の決済手段も合わせて用意しておくなど対応することが大切です。
7.まとめ
中国の越境ECでは、確実に商品が顧客の元に届いてはじめて店舗へ代金が振り込まれる第三者決済が主流になっています。これは、詐欺や偽造品などの多い中国だからこその信頼性をより多く求めるしくみといえます。
また第三者決済に押されてはいるものの、デビットカードが相変わらず多く利用されていることは、日本と異なる点であることから注目したいところです。消費者が決済しやすいものを導入することで、成果につながるでしょう。
また世界各国で越境ECを行う際、決済手段は最適なものを選択し、リスクのあることは事前に対応するのをおすすめします。