1. 中国ECサイトの動向
近年、中国ECサイトにおいて最も大きな勢力となっているのが、アリババグループ(阿里巴巴集団)です。数種類のECサイトを運営しており、それぞれ人々のニーズに応えています。
例えば、中国最大級の流通数を誇るBtoCのECサイトである「天猫(Tmall.com)」や、CtoCの「淘宝网(taobao.com)」、BtoBの「Alibaba.com」があります。天猫については、「天猫国際(Tmall Global)」という国際版もあります。
アリババグループの2020会計年度は、2019年4月1日から2020年3月31日までで、この1年の決算の結果、1月から3月までの新型コロナの影響はあったものの、年間売上高は年初に提示した5,000億元(約7兆5,000億円)を上回り、前年同期比35%増となったと発表しました。
特に天猫などを含むコアコマース事業の売上高は、2019年10-12月期(会計年度2020年第3四半期)の決算の発表時には前年同期比38%増の1,414.75億元(2兆1,928.6億円)と公表され、伸びていることがわかります。
また、アリババグループといえば、中国のECが特に盛り上がる11月11日のシングルデー「独身の日」の一日で大きな売上を上げることで知られていますが、2019年には過去最高となる2,684億人民元を売り上げました。日本円でいうと約4兆2,000億円です。この額を一日で売り上げたとは脅威的です。
1-1.中国ECサイトのシェア
中国ECサイトには、アリババグループのサイトだけでなく、他の企業のサイトもあります。そこで、今、中国ECサイトのシェアはどうなっているのか見てみましょう。
中国商業連合会発表資料に基づき野村総合研究所(NRI)が作成した「中国小売業の取引高ランキング」によれば、2018年はトップ3がいずれもECサイトでした。
1位 天猫 24,520億元
2位 京東 16,769億元
3位 拼多多 4,716億元
また次に取引高が多かったのは10位の唯品会で804億元でした。
このようなECサイトの膨大な集客と販売実績には、どのような背景があるのでしょうか。アリババグループが運営するECサイトのほか、他の企業が展開する人気の中国ECサイトを含めた、主要な中国ECサイトの特徴から探ってみましょう。
2. 勢力のある中国ECサイトの特徴
2-1. 天猫(Tmall.com)/アリババ
BtoCの企業の公式ショップが集まるサイトです。日本の大手企業も数多く出店しています。公式通販だから得られる「正規品」「偽物ではない」という安心さが人気です。
越境ECに取り組む日本企業にとっては、最も親和性が高いでしょう。越境EC専門の天猫国際(Tmall Global)では、中国法人がなくても出店できるほか、外貨決済に対応しているため、日本円で入金されるというメリットもあります。
2-2. 京東商城(JD.com)/京東集団
京東集団によるBtoCのサイトです。ショッピングモール型の天猫と異なり、総合小売店としてECを展開しています。天猫は、ちょうど日本の「楽天市場」に近いものですが、京東商城は「Amazon」に近いといわれています。
強い商品ジャンルはパソコンや家電、携帯電話などですが、家具、アクセサリー、化粧品などもあり、幅広く展開しています。
アリババグループが展開するECサイトの利用者層よりも、やや高所得層に利用されているといわれています。
こちらも越境EC向けに「京東 全球購(JD World Wide)」があり、中国法人不要で出店できます。
2-3.拼多多(Pinduoduo)/Pinduoduo
拼多多(Pinduoduo)は2015年に誕生した新興ECプラットフォームです。ソーシャルECの仕組みを持っており、販売個数を規定数超えると、割安で購入できる仕組みです。
ユーザーが友人、家族に共同購入をしようと誘うことで、安く購入できます。
アリババグループや京東と真っ向から勝負するのではなく、ソーシャルECという新たな分野で勝ち抜きました。
2-4. 淘宝網(Taobao.com)/アリババグループ
中国人たちが何かをECサイトで買いたいと思ったときに、商品が売られているかどうかや、最安値のチェックのために利用されているのが、CtoCのECサイト「淘宝網(Taobao.com)」です。CtoCとはいえ、中小企業なども出店しているため、BtoCも含まれます。出品者や出店数の多さから、自ずと競争率が高まっていることから、全体的に価格が安いのが特徴です。また、食品、電化製品、衣類、化粧品、家具などあらゆるジャンルが揃っている、品ぞろえの豊富さも人気の理由です。
中国ECに取り組む際には、自社が売ろうとしている商品と同ジャンルの商品が、淘宝網でどのくらいの価格で売られているのかを確認するのに使えます。また、越境ECへ本格的に乗り出す前に、まずは個人として淘宝網で出店して様子をみてから公式出店するという方法もあります。
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3. 越境ECの土台は用意されている
今、越境ECのプラットフォームは、天猫国際などがあり、すでに多くの日本企業が出店しています。しかし、出店したは良いものの、見合った売り上げの成果を出すには、やはり中国で人気のあるECサイトをよく観察し、傾向をつかんで学ぶことも重要といえます。
また、時世を読み解き、爆買い終息といわれる中、「自分用の消耗品を適度に買う」意向に合わせた商品展開や、「日本でしか買えないもの」を意識するほか、この新型コロナの感染拡大を受けたコロナ消費も意識し、現在の中国人たちの心理に合わせた商品展開も重要になってきます。
4. まとめ
中国ECで成功するためには、まずは人気のECサイトの観察からはじめてみたいものです。そして中国人消費者の目になって、客観的に見ることで、日本企業の店舗がどのような展開をすべきかが自ずと見えてくるでしょう。