1.押さえておきたい中国越境ECの基本
越境ECとは、国を越えてインターネットの通販サイト(電子商取引サイト)に出店・出品し、取引をすることを指します。
中国越境ECとは、中国のECサイトを利用して、中国向けに商品を販売する時などに使われる言葉です。
中国越境ECには一定の規制があり、法令を確認する必要があります。
しかし、中国越境ECの市場規模は、拡大傾向にあります。経済産業省による2018年の調査によると、中国向け越境ECの市場規模は、日本のものだけで1.5兆円にものぼり、前年から約20%増加しました。
中国EC市場は世界ランキングトップであり、今後さらに伸びていくと予想されているため、中国越境ECは引き続き注目すべきマーケットとなります。
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2.中国越境ECサイトのシェアランキング上位4サイト
iiMedia Researchによる2017年上半期 中国越境ECモールのシェアの結果によると、ランキング上位は次の結果となっていました。
第1位 網易考拉海購(Kaola.com)……24%
第2位 天猫国際(Tmall Global)……20%
第3位 唯品国際(global.vip.com)……16%
第4位 京東全球購(JD Worldwide)……13%
いずれも一度は目や耳にしたことのある中国越境ECサイトではないでしょうか。 1位の「網易考拉海購(Kaola.com)/コアラ」は、2位 天猫国際の運営元のアリババグループによって2019年に買収されています。そのため中国EC市場においてはアリババグループ全体で市場の5割強を占めており、中国ECランキングトップのグループとなっています。
3.主要中国越境EC4サイトをランキング順に比較!
主要な中国越境ECサイトランキング上位4つの特徴を比較してみました。それぞれの中国越境ECサイトの販売モデルと特徴、審査の通りやすさについてレポートします。
3-1.網易考拉海購(Kaola.com)
●販売モデルと特徴
2015 年1月9日に開設された越境ECサイトで、2019年にはアリババグループの傘下に入っています。
販売モデルは卸売型です。基本的に、網易考拉海購自体が買い付けた海外製品を、直販方式でECサイト上において展開する仕組みになっています。網易考拉海購は日本をはじめとした海外各社とパートナーシップを結んでいます。保税倉庫を中国内に構えており、そこから配送を行います。
この直販方式により、ユーザーは偽物かどうかの心配をすることもなく、安心して海外製品を買うことができるメリットがあります。また、直販方式だからこそ、価格をできるだけ抑えることが実現できているのも強みです。もし万が一、販売製品が偽物であった場合は、販売価格の10倍の補償をしています。
●審査の通りやすさ
こうした販売モデルを持つことから、網易考拉海購自体が物販のリスクを受けることになるため、どうしても審査は厳しくなる傾向があるようです。また在庫は日本に保有したまま、日本の倉庫から中国の消費者に直送する仕組みがあることから、必ずしも現地に倉庫が必要ではないようです。また中国現地に一時的に商品をストックしておき、そこから配送するモデルもあるようです。
【用語集】
3-2.天猫国際(Tmall Global)
●販売モデルと特徴
中国最大のインターネット企業、アリババが2013年に開設した、越境EC専門のモールです。
販売モデルは約90%が出店型といわれます。つまり日本企業は天猫国際にモール出店し、自社で運用していくことになります。ただし、中国現地に法人を立ち上げなくともよく、日本から直接申し込める気軽さが魅力です。
●審査の通りやすさ
天猫国際の出店審査は、中国越境EC業界で最も厳しいといわれています。
【用語集】
3-3.唯品国際(global.vip.com)
●販売モデルと特徴
卸売型の販売モデルとなっています。中国国内のECサイト唯品会(vip.com)の越境ECモール版です。卸売型であることから、偽物の恐れがないというメリットを打ち出しており、実際、中国越境ECモールにおいて急成長しています。世界各国に倉庫を所有しており、自社配送を行っています。中国自社に保税倉庫を持つことで、中国越境EC運営の基盤としているようです。2017年7月には日本の千葉県に倉庫を構え、直接中国人消費者へ配送する直送モデルにも対応しました。
●審査の通りやすさ
審査の通りやすさについての主な口コミはありませんが、100%卸売型ならではの厳しさがあると推定できます。
3-4.京東全球購(JD Worldwide)
●販売モデルと特徴
京東全球購(JD Worldwide)は、越境専用の越境ECモールで、出店できるのは海外に法人がある企業となっています。
全体の約70%は出店型で、残りの約30%は卸売型といわれています。天猫国際と同様に、日本から直接申し込みができるため、現地法人は不要です。また、商品を直接日本から配送するモデルと、一時的に現地に商品をストックしてそこから配送するモデルとがあります。
2015年6月にオープンした日本企業専門の「日本館」は盛況で、日本法人が設立されています。従来、京東は物流に強みのある会社であり、2017年には日本のヤマトホールディングスと中国国内でコールドチェーン(低温物流網)を拡大するための契約を結び、越境ECにおいても物流に力を入れています。
●審査の通りやすさ
天猫国際と比べると審査は比較的通りやすいといわれますが、京東は信頼重視であることから、それ相応の信頼性が必要になります。
4.まとめ
今、中国越境ECサイトは、激戦状態にあります。どのサイトがトップシェアを獲得してもおかしくないほどの力の入れ具合になっています。各社の偽物回避のための信頼性向上、物流施策強化の状況をよく踏まえたうえで、出店を検討する必要がありそうです。