1.アリババが発表したニューリテール戦略とは
2016年末、アリババグループのCEOジャック・マー氏が、中国の杭州で開催されたアリババ雲栖大会(The Computing Conference)において次のような発表をしました。それは、オンラインビジネスが今後10~20年でなくなり、以後はオンラインとオフラインの融合である「ニューリテール」が誕生するというものです。
そしてアリババグループはこれを自ら先んじて実践するために「ニューリテール戦略」を打ち出したのです。
1-1.ニューリテール戦略とは
ニューリテール戦略とは、オンラインとオフラインの融合を図るO2Oビジネスモデルのことです。具体的に「個人店舗とオンラインとの融合」「無人コンビニの拡大」「食材注文で調理までしてくれるスーパー“盒马鲜生(ファーマーシェンシェン)”」などが挙げられました。
1-2.ニューリテール戦略が推進される背景
なぜオンラインが廃れ、O2Oが台頭するのでしょうか。その背景には、経済成長やテクノロジーの発展などの日本や世界でも同様にみられることもありますが、特に中国では中国政府がある計画を立てたことにも理由があるようです。
それは、「第13次五カ年計画」です。この計画において、商業・貿易・物流の発展と共に、オンラインとオフラインを統合して、伝統型サービス業の良好な発展を促すことが設定されました。つまり、小売店などのオフラインとオフラインの連携を強化することで、伝統型サービス業の競争レベルや生産性、サービス品質の向上を目指すものです。さらに、新たなビジネスモデルの創造促進というねらいもあります。
つまり、中国では消費者市場が大きな変革期にきているという背景があり、そこへ大きな変革を先んじて行うというのがアリババグループのねらいというわけです。
2.ニューリテール戦略の具体例
ニューリテール戦略とは、具体的にはどのようなもののことなのでしょうか。具体的な事例から確認していきます。
2-1.アリババグループの「盒马鲜生(ファーマーシェンシェン)」
アリババグループは、先に示した「個人店舗とオンラインとの融合」「無人コンビニの拡大」「食材注文で調理までしてくれるスーパー“盒马鲜生”」がすでに進められています。中でも、「食材注文で調理までしてくれるスーパー“盒马鲜生”」は斬新な試みといえます。これは、スーパー店内で食材を買うと、その場で料理を作ってくれ、その場で食べられるというスーパーです。また購入はアリペイ決済が可能です。
店舗に行けない場合も、アプリでオンライン注文すれば、スピーディーに商品を届けてくれるサービスもあります。まさにオンラインとオフラインの融合といえます。
2-2.テンセントがスーパーマーケットチェーン「永辉超市(Yonghui SuperMarket)」の株式取得
アリババグループに負けじと、WeChat(微信・ウィーチャット)で知られるテンセントもニューリテール戦略に乗り出しています。2017年12月に中国最大級のスーパーマーケットチェーン「永辉超市(Yonghui SuperMarket)」の株式を取得しました。このことから、アリババグループのニューリテール戦略の店舗を模倣するとみられています。
2-3.京東の「7Fresh」
京東はニューリテール戦略の小売店「7Fresh」を2018年1月に打ち出しました。アリババのスーパーと同様、O2Oをコンセプトとした店舗で、スピーディーな配送も特徴的です。また、専用アプリから店内のショッピングカートのQRコードをスキャンすると、自動運転する「スマートショッピングカート」や、陳列された果物などのQRコードをスキャンすると生産業者からの流通プロセスなどの商品の細かな情報が表示される「スマートミラー」などの進んだO2Oサービスを導入しています。
2-4.良品計画の「MUJI HOTEL」
日本企業もニューリテール戦略に乗り出しています。無印良品で知られる良品計画は、中国の深センで「MUJI HOTEL」という宿泊することで無印良品の商品コンセプトを体験理解できると共に、店舗も併設するホテルを始めました。オフラインでの無印良品の世界観の体験を充実させることで、オンラインの販売促進につなげるねらいがあると考えられています。
3.まとめ
アリババグループが発表したニューリテール戦略を受け、各社はそれに追随するように動き始めています。日本企業もいち早くこの時代の流れに乗り、オンラインにこだわりすぎず、オフラインにも目を広げる時期がきているといえそうです。