1. 中国でトレンドの「ライブコマース」とは
近年、中国で急拡大している「ライブコマース」とは、インターネット上で生中継される動画による実演販売のことです。
数年前からトレンドでしたが、2019年には爆発的に成長し、2020年も新型コロナをきっかけにより一層注目を集めています。直近では、6月18日の中国ECの大規模セールの日にも多くの販売者がライブコマースを活用しました。
日本ではライブコマースはそれほど浸透していませんが、中国では、すでに数多くの個人や企業がライブコマースを積極的に活用し、収益を上げています。
なんと1日で100億元(約1,530億円)を売り上げたメーカーも存在します。
1-1.中国のライブコマースの流れ
中国で人気のライブコマースは、商品販売側がライブ動画を通じて商品を紹介し、視聴者が紹介されている商品をその場でインターネットを通して購入できるものです。
インフルエンサーや企業の社長などが、リアルタイムに商品の説明をするのが特徴的で、視聴者はそれを見ながら直感的に購入を決められます。
視聴者の中には、もともとその商品が欲しかったけれど、動画でどんなものか確かめてから買うのを決めたいという人や、初めて商品を見る人、インフルエンサーのファンで、その人が紹介するものを随時チェックしているといった人もいます。
そんな人たちにとって、ライブコマースは格好の購入場所といえるわけです。
そして、ライブコマースのもう一つの特徴が、ライブ配信に対してリアルタイムでコメントを出せる点です。コメントでは自由な感想を述べて楽しめるのはもちろんのこと、質問もできるので、安心して買い物ができます。
1-2.中国で人気のライブコマースプラットフォーム
中国では、ライブコマースを配信するプラットフォームが豊富に存在します。
中でも特に人気なのが、巨大な中国ECサイトとして知られる、CtoCの形態をとる淘宝网(タオバオ)による「タオバオライブ(淘宝直播)」です。
タオバオの出店者たちがライブコマースを行うEC専用のライブコマースプラットフォームであるため、視聴者も購入目的で閲覧することが多く、購買につながりやすいといわれています。
「Kuaishou(快手)」は、動画共有アプリで、動画公開やライブ配信ができるアプリです。ライブ配信機能だけではないため、ライブコマースを行っても必ずしも購買にむすびつくわけではないようですが、膨大なユーザー数を抱えており、さらにライブコマースに力を入れていることから伸びているプラットフォームです。
ByteDanceの支援を受けた中国版TIKTOKの「Douyin(抖音)」は、いま中国でトップのショートビデオプラットフォームといわれています。ライブコマースプラットフォームとしては、こちらもタオバオライブには劣るものの、コロナを受けてライブコマースが増えたといわれています。今後、さらなる伸びが期待されます。
2. ライブコマースのメリット
ではなぜ今、EC×ライブ配信がこれほどまでに注目されているのでしょうか。それは通常のECと比較してメリットが大きいためです。
具体的なメリットを挙げてみます。
2-1.臨場感・リアルさを伝えられる
ECサイトの商品を紹介する際、画像やテキストだけでは、なかなかリアルなところを購入前に認知してもらいにくい部分があります。
一方、ライブコマースは、ライブ配信で商品を紹介することで、どれくらいの大きさなのか、どんな風に使うのかなど画像やテキストでは伝えにくい要素が一目で分かります。
2-2.店舗やメーカーのアピールになる
ライブコマースは、ECサイトの店舗やメーカーそのもののアピールにもなります。ECサイトを陰で支える運営スタッフがライブコマースする場合ですが、そのECサイトのスタッフはどんな人なのか、どんな思いで商品を売っているのかといったことが、映像ならリアルに伝わります。
2-3.スマホで手軽に見ることができる
そもそも動画は、移動時間などの隙間時間に活用されるスマートフォンと相性がいいところがあります。もちろんPCでも動画は視聴されていますが、移動中は、スマホでじっくり文字を読み込むよりも、動画で見たほうが素早く手に取るように分かりやすいというところがあります。ライブコマースは、スマホ向きといえます。
2-4.越境ECにおいても伝えやすい
例えば日本企業が言葉の通じない国の越境ECで商品を販売する際に、文字や写真で説明するよりも動画で使い方を見せたほうが分かりやすいでしょう。
中国ECで活用すれば、中国人にとってもインパクトと新鮮味があり、より商品に興味を持ってもらえるかもしれません。
3. ライブコマースのプロモーション効果
ECとライブコマースをかけあわせてプロモーションをすると、どのような効果が得られるでしょうか。その可能性を事例と共に探っていきます。
3-1.PVの増加
ECサイトがライブコマースを行うことでまず得られるのが、PVを通常よりも多く獲得できる可能性があることです。Web上の文章や画像に、動画の情報がプラスされれば、より商品を比較しやすく、興味も湧きやすくなります。また、ライブコマースを行っている商品があることで、「他とはちょっと違う商品」であることが伝わり、興味を引くことができます。
3-2.売上の増加
ライブコマースが購買にうまく結びつけば、売り上げ増大が見込めます。実際、タオバオライブでは2時間の生放送後に2千万元、つまり約3億円を売り上げた例もあったそうです。こちらは中国のKOLによるもので、もともと引きが強い要素が多かったという背景がありますが、ライブ動画の配信をすることで、より多くの視聴者の興味関心を引くことができました。
3-3.お客様とのエンゲージメント強化
ライブコマースを続けていくことで、目に見える数字ではないものの、消費者との関係強化には大いに貢献できると考えられます。ライブコマースに対する「いいね!」、コメントなどのリアクションを得るコミュニケーションを重ねることで、エンゲージメント強化につながります。
また、ただ商品を紹介するだけでなく、例えば使い方が少し個性的な化粧品であれば、その使い方を実際にライブ配信で行って見せるということは、消費者にとって有益な情報となります。そうした消費者への良質な情報提供の一環として、ライブは利活用する価値があります。
4. まとめ
中国で今爆発的に人気のライブコマース、大きな収益を挙げることのできる一つの方法として注目されています。
そして、日本企業も越境ECで利用することで、効果を出すことができる可能性があります。数字のためだけでなく、長い目で見た顧客との関係強化のためにも、ライブコマースを活用することを検討してみてはいかがでしょうか。