1. 直送モデルと保税区モデルの税金
中国越境ECに関する税を理解するためには、まず中国越境ECの配送モデルについて知っておくとわかりやすくなります。中国越境ECの販売・配送ルートは主に「直送モデル」と「保税区モデル」の2つに分けられます。
1-1.直送モデル
1-1-1.直送モデルとは
直送モデルとは、基本的に、中国本土からECで注文を受けたら、日本から中国人消費者の自宅などに直接配送する方法です。EMS等の国際宅配便を利用して配送します。
このモデルでは、中国の現地に倉庫などを持たず、注文があったらその都度、日本の倉庫等から個別に商品を中国の消費者へ配送します。
通関手続きを行うため、一定期間必要となり、中国人消費者がネット注文してから手元に届くまでに時間がかかるというデメリットがあります。
しかし小規模な越境ECを展開している場合、中国の倉庫に保管するといった工程や手間、コストがかからないというメリットがあります。
1-1-2.直送モデルに関わる税金
日本から中国人消費者に直接配送する場合、「個人輸入」に該当します。輸入にかかる税金については、輸入者である消費者が納付します。このとき納める必要のある税金が「行郵税」です。商品の種類ごとに税率が定められており、行郵税額50元以下の場合は免税になります。
1-2.保税区モデル
1-2-1.保税区モデルとは
保税区モデルとは、中国人消費者からの注文が入る前に、中国の「保税区」に商品をまとめて輸送し、商品を保管しておきます。そして注文が入ったら、そこで初めて通関続きをし、出荷するという方式です。
つまり、日本から中国へ商品を輸送する際には、通関手続きを省くことができます。このことから、中国人消費者は注文をしてから商品を受け取るまでの期間を短縮できるというメリットがあります。また、一度に複数の商品を輸送するため、輸送コストが低減され、それが価格にも反映されるのが一般的です。これもメリットといえます。
1-2-2.保税区モデルに関わる税金
保税区モデルは、一般貨物として商品を輸入する際にかかる「関税、増値税、消費税」の3種の税に関係してきます。しかし、2019年1月1日から、中国政府は「越境EC輸入」を行うことのできる保税区を限定して認定し、越境ECとして認められる場合は、「関税率を0%、増値税を70%、消費税を70%」とする優遇措置を設けました。
●2019年1月に認定された保税区モデルで越境ECが可能な37都市
天津、上海、重慶、大連、杭州、寧波、青島、広州、深セン、成都、蘇州、合肥、福州、鄭州、平潭、北京、フフホト、瀋陽、長春、ハルピン、南京、南昌、武漢、長沙、南寧、海口、貴陽、昆明、西安、蘭州、アモイ、唐山、無錫、威海、珠海、東莞、義烏
しかし、この優遇措置を受けるためには、越境ECで取引する品について、中国政府が定めた「ポジティブリスト」に掲げられている品である必要があります。このリストに掲載されていない品を取引する場合は「一般輸入」の扱いになり「関税、増値税、消費税」が課せられます。
また、優遇措置を受けるためには、もう一つ規定があります。それは「取引限度額」です。
2019年1月1日から取引限度額が、「1回当たりの取引金額5,000元以内、かつ、年間取引金額の上限を2.6万元」となっています。この取引限度額を超える場合は一般輸入の扱いになり「関税、増値税、消費税」が課せられます。
この取引限度額は、直送モデルで行郵税が適用される条件でもあります。直送モデルであっても、この取引限度額を超えてしまうと、行郵税ではなく「関税、増値税、消費税」が課せられます。
ちなみに、直送モデルでは、輸入者である消費者が行郵税を納付すると述べましたが、保税区モデルはそれとは異なります。保税区モデルでかかる輸入に関する諸税は、中国での販売者がまとめて納付します。