近年、中国越境ECに取り組んでいる企業は多くあります。新型コロナの感染拡大を受け、ここ最近取り組み始めたという企業もあるかもしれません。その際、商品をどのように展開するかということと共に、重要になるのが商品選びそのものです。
いくら集客が成功しても、肝心の商品選びが中国人のニーズに合ったものでなければ、購買という成果につながりません。近年、中国における越境ECでは、どのようなものが売れているのか、またコロナ禍を受け、売れている商品がどのように変化しているのか、みていきましょう。
1. 中国の近況から探る買い物動向
1-1. 爆買い収束
訪日中国人の買い物傾向といえば、一度に大量の商品を買う「爆買い」のイメージが強いかもしれません。爆買いは、2015年に最も多くなり、2016年に終息したといわれています。爆買いが終息した理由の一つとして考えられるのが、対人民元の「円安から円高への変化」です。
爆買い収束を受け、これまで化粧品や日用品などの消耗品を、友人や家族の分まで買っていた個人は、自分の分だけ、もしくはお土産程度に手に入れる傾向が強くなりました。
特に、日本でしか手に入らないものに人気が集まっています。この「日本限定」への傾倒は、宝飾品やブランドバックなどの高級品については、特に強くなっていると考えられます。もともと中国人は「限定もの」に惹かれる傾向があります。
1-2. 一人っ子政策の廃止
中国では2016年1月1日から「一人っ子政策」が廃止され、夫婦1組につき、2人まで出産できるようになりました。このような背景もあり、マタニティ商品や新生児アイテムは売れ筋になっています。
1-3. 新型コロナによるロックダウンでEC消費が増加
そして2019年末に新型コロナウイルスの感染拡大が発表されました。その後、地域によってはロックダウンがされては解除され、人々の消費行動に大きな変化がもたらされました。
株式会社ヴァリューズが2020年6月、中国の20~40代の男女1,071人を対象に、新型コロナウイルス感染拡大およびロックダウンによって、中国人の消費意識がどのように変化したのかを知るために実施したアンケート調査結果では、ロックダウン前後の消費動向を知ることができます。
この調査結果では、ロックダウン前~ロックダウン解除後での土日・休日の過ごし方として「インターネットショッピング」は期間を通して高水準を保っており、ロックダウン解除後は56.6%で1位となりました。土日・休日は多くの中国人ユーザーがECで消費活動を行っているシーンが目に浮かびます。
ちなみにロックダウン解除後に検討・購入した商品の産国については、すべての項目で中国産が1位となりましたが、多くの項目で日本産は2位となっていました。越境ECで日本商品の購入も高まっていたことが伺えます。
1-4. リベンジ消費
やがてコロナが収束の兆しを見せた中国では、経済活動や日常生活が正常化し、2020年5月1日~5日の労働節休暇期間中、中国各地で消費拡大のためのイベントが開催され、「リベンジ消費」に注目が集まりました。
これまで抑制的な生活を強いられていた人々が、その反動から消費活動をリベンジするという意味合いです。
店頭でのショッピングや国内旅行などの消費が高まりました。
2. 中国越境ECでコロナ以前に売れていた商品
中国の越境ECに取り組む際には、どんな商品に力を入れればいいのでしょうか。狙い目商品を具体的に探ってみます。まずはコロナ以前に中国越境 ECで売れていた商品をみていきましょう。
2-1. 日本でしか買えない消耗品全般
日本製品の安全・安心さを求める中国人ユーザーたちは、日用品などの消耗品全般を越境ECで購入しています。
越境ECの売れ筋商品についての数々の調査を見ると、中国の越境ECにおける売れ筋は、化粧品、マザー・新生児用品、食品・保健関連商品、衣料品・靴などが多い傾向があります。
また、一つの傾向として、数量限定ものや、大手ブランド同士がコラボした商品など、高級品というよりも、個性で勝負するような品も人気の傾向があるようです。
2-2. マザー・新生児用品
2016年からはじまった「二人っ子政策」による影響が、越境ECにも出ていたようです。
特に日本製の紙おむつ人気はよく知られていることです。日本製は高品質で安全・安心といった点が評価されています。中国では偽物も多く出回っていることから、日本メーカーの公式通販で購入できる安心感も手伝って、越境ECに注目が集まっているようです。
2-3. 少額デジタル・家電製品
日本のデジタル製品には定評があります。円高の影響から高額商品より、少額デジタル商品に注目が集まる結果となったようです。
家電製品については、比較的安価な、ドライヤーや保湿機、ホットビューラーなどの美容家電が人気です。
2-4. 美容・スキンケア製品
日本製の美容・スキンケア関連商品は、中国人女性から非常に注目を集めています。
日本でしか買えないというレア感、信頼できる正規品という点に評価があります。そこへきて、安値とくれば、注目度はさらに高まります。
特に、フェイスマスクやコットンなどが人気です。
3. 新型コロナ感染拡大を受けた中国ECの売れ筋商品
新型コロナの感染拡大を受け、巣ごもり需要から中国ECがより活性化したことは先述の通りです。具体的にどのような商品が売れるようになったのでしょうか。
3-1. ロックダウン前後の中国ECで購入が増えた商品
先のヴァリューズによる調査結果によると、ロックダウン中に購入が増えたもののトップ3は「日用品(掃除用品など)」「医薬品・サプリメント」「お菓子・おやつ」で、ロックダウン解除後は「服・カバン・靴」「日用品(シャンプー・歯ブラシなど)」「日用品(掃除用品など)」となりました。
ロックダウンの解除後は、外出時に役立つグッズ服・カバン・靴類が売れ始めたようです。
3-2. 中国ECで売上が急上昇した商品
コロナ禍において、中国ECで、特に売り上げが急上昇した商品にはどのようなものがあるのでしょうか。
ECデータ分析サービスの提供などを行う株式会社Nintが発表した、中国消費者の中国ECの消費動向の、2020年1月17日~2月13日(昨対比:2019年1月28日~2月24日)の推計データでは、ウイルス対策アイテムの「マスク」「ゴーグル」「防護服」といった商品は、売上が急上昇しています。前年度の同期間と比較するとマスクは183倍、ゴーグルは97倍、防護服は10倍にも上りました。
また「手洗い洗剤」「消毒液」「医療用消毒製品」などの洗浄ケア用品や「ビタミン関係の健康食品」、消毒、殺菌機能搭載の「殺菌ライト」や「消毒ボックス」なども売上が急上昇しました。
3-3. WeChat(微信・ウィーチャット)上の越境ECサイトで好調の商品
中国最大級のSNSであるWeChat(微信・ウィーチャット)上に越境ECサイトを構築するサービス「ShopCN(ショップシーエヌ)」を提供するJC Connect株式会社によると、ShopCN利用企業全体のコロナ禍が始まった2020年1月から2020年3月の今四半期における取引高は、2019年10月から2019年12月の前四半期と比べて220.5%増しとなったといいます。
コロナ禍においては、越境ECでも活発に取引がされていることがわかります。同社によれば、特に「化粧品」や「美容関連商品」「アニメ関連商品」の売れ行きが好調だといいます。
4. まとめ
中国越境ECに取り組む際には、ぜひこれらの消費動向や売れ筋商品を参考にして成果につなげましょう。特に新型コロナ感染拡大を受け、人々の関心はどのように変化しているのかをとらえることは重要といえます。