かつて訪日中国人の「爆買い」が注目を集めました。これは日本人には到底思いつかなかった中国人たちの行動です。中国ECマーケティングを効果的に行い、集客を図るには、まず中国人たちの生活行動特性を、既成概念を取り去って掴むことが重要です。
特に中国現地におけるユーザー間のコミュニケーションや情報交換は、日本人が思っている以上に重要な意味を持ちます。その中でも、圧倒的な影響力を誇る「KOL」発信の情報価値は、中国マーケティングを行うに当たって、必ず知っておく必要があります。
そこで今回は、KOLの基本からKOLを活用した中国ECマーケティングのメリットや事例まで、KOLについてご紹介します。
1. 中国人KOLとは?
「KOL」とは、「Key Opinion Leader(キーオピニオンリーダー)」の頭文字をとったものです。
KOLは日本でいう「インフルエンサー」に似ている存在であり、中国人KOLは、自身のブログや、人気のSNSであるWeChat(微信・ウィーチャット)やWeibo(微博・ウェイボー)などで、興味関心のある商品やサービス、ブランドの情報をリアルタイムで発信しています。そして彼らは、多くのファンやフォロワーを持ち、中国人たちの購買行動に多大な影響力を及ぼしています。
1-1.KOLとインフルエンサーとの違い
日本ではKOLのような人物を「インフルエンサー」と呼んでいますが、KOLとは少々意味合いが異なります。
中国におけるKOLとは、簡単に言えば、「専門性を持ったインフルエンサー」です。
一般的なインフルエンサーは、インターネット上の人気者、有名人であり、SNSのフォロワーを膨大に持つ、影響力の高い人物ですが、KOLはそれに専門性が加わります。専門的な知識や技術を持っているのです。
中国で消費行動をする際に、インフルエンサーやKOLによる情報が重要視されるのは、企業発信の公的情報だけでは偽物をつかまされたり、騙されたりするリスクがあるためです。そのため、ユーザーの口コミが重視されますが、その中でもインフルエンサーやKOLといった影響力の高い人物が発信する情報は信頼度が高いので重視されます。特にECで何かを購入する場合、その商品の使い勝手や特徴などを知るには、販売する企業や店に聞くよりもインフルエンサーやKOL発信の情報を信じるのです。
KOLは、その信頼性を専門性で補填してくれます。ただ単に「有名人がイチオシ」というだけでなく、「こういう専門的な知識を持った人が実際に使ってみておすすめしている」という観点からその商品を知ることができれば、より正確にその商品について評価できますし、信頼も高まるでしょう。
2. KOLを中国ECマーケティングで活用するには?
KOLは、現在、その情報拡散性や信頼性の高さから、多くの企業が注目し、マーケティングに活用しています。先述の通り、中国人たちは、企業が直接発信する広告よりも、ユーザー同士の情報交換や口コミのほうを重視する傾向があります。
例えば、中国人の文化に「買い物リスト」を作成するというものがあります。これは「自分の欲しいものリスト」ですが、それは中国での買い物はもちろん、日本へ旅行した際に購入する場合も含まれます。
この買い物リストを作成する中国人に対し、KOLに日本の商品をアピールしてもらうという活用方法があります。
例えば、スキンケアについての知見を持つKOLのAさん(30代女性)がWeibo(微博・ウェイボー)で、「こないだ日本へ旅行に行ったときに買った、このブランドの化粧水を使ったら、とても肌がうるおった!」と体験談の口コミ情報を投稿したとします。すると、彼女の投稿を見たフォロワーたちは、「Aさんが絶賛している日本のブランドの化粧水は、とてもいいらしい」と好印象を持ちます。
すると次回日本に行ったときの買い物リストに加わり、日本の越境ECサイトや「タオバオ」という大規模CtoCオンラインショッピングサイトでの購入を検討するユーザーも出てきます。
このようにKOLは、日本企業と中国人消費者との懸け橋的存在として、非常に重要なカギとなる存在となっており、中国マーケティングに大いに活用できます。
3. 日本企業がKOLマーケティングを取り入れるメリット
実際、日本企業が、KOLマーケティングを取り入れる場合に、どのようなメリットがあるのかをみていきましょう。
3-1.拡散力が高いので一気に広がる
例えば商品の認知度を上げたいという場合に、フォロワー数の多いKOLに依頼すれば、広く拡散し、一気に認知度を高められます。そのKOLが勧めていたということ自体でも価値が上がります。
3-2.専門性を持って商品をアピールしてもらえる
KOLの専門性は、商品アピール時に効いてきます。例えば、化粧品の専門知識の高いKOLに自社化粧品をアピールしてもらえば、価値が上がりますし、販売企業や商品そのものへの信頼性も増します。
このようにKOLマーケティングは、商品やブランドとマッチングすれば大きな成果につながります。一方で、そうしたKOLの発掘そのものにかかるコストや、依頼コストはかさむこともあります。そのため、コストパフォーマンスを考えた取り組みが求められます。
4. 日本企業がKOLに依頼するときの注意点
日本企業がKOLマーケティングを実施する際、KOLにアピールを依頼することになるでしょう。その際にはぜひ注意したいことがあります。
4-1.マッチング度合いを重視してKOLを選定する
自社の商品に関する専門性にマッチし、さらに自社のブランドイメージともマッチしたKOLを選ぶことが重要です。ただ単に「人気だから」という理由で選んでしまうと誤算が生じることもあります。
4-2.どの媒体で発信するか確認する
KOLによって得意とする媒体が異なります。WeChat(微信・ウィーチャット)なのかWeibo(微博・ウェイボー)なのか、それともTikTokなのか、自社商品のターゲットにマッチした媒体で情報発信するKOLを選ぶのはもちろん、SNSの規模も事前に把握しておく必要があります。
4-3.KOLマーケティングの戦略を明確にする
ただKOLに情報を拡散してもらうだけでなく、KOLマーケティング全体の戦略を明確に定めておくことが重要です。KOLに情報発信してもらった後に誘導する先、販売ルート、見込む効果を数値で目標設定しておくなど、しっかりと事前準備をしておきましょう。
5. KOLマーケティングの具体例
KOLマーケティングは、越境ECのみならず、インバウンドプロモーションとの連携による、さらに大きな効果をもたらします。例えば、日本での買い物へと誘導し、さらに後日のリピート購入を越境ECサイトで獲得するといった良いサイクルを生み出している事例があります。
5-1.KOLマーケティングによるECリピート購入獲得事例
ターゲットは、日本への旅行を検討している中国人たちです。日本への旅行前に、お得な情報、口コミ評価の高い情報、KOLからの有益な情報を元に、買い物リストが作成されます。このとき役立つのが、KOLによるSNSやブログ上の情報です。特にKOLの中でも、在日中国人たちのリアルな声は、中国在住者にとっては信頼できる有益な情報となります。
そこで、この事例の企業が行ったのは、KOLに対してプロモーションしたい商品サンプルを無料配布し、実際に使ってもらうことでSNSやブログで体験談を書いてもらうことです。KOLに体験ベースでの情報を拡散してもらうことで、より多くのユーザーに響くコンテンツを届けることができます。
日本へ訪れたユーザーたちは、KOLなどの情報を参考に作った買い物リストを元に買い物をしました。そして中国へ帰国後も、その商品を実際に使って気に入った人は、日本の越境ECサイトでリピート購入するようになりました。
こうした良いサイクルができあがったことで、実店舗・ECにおける継続的な売り上げ増進が実現できています。
6. まとめ
このように、KOLは日本企業が中国ECマーケティングを行う際に「懸け橋」となる非常に重要な存在です。実際、活用している日本企業も少なくありません。中国ECで成果を出したいと考える際には、ぜひ検討し、マッチングや注意点を踏まえた上でトライしてみてはいかがでしょうか。