1.越境ECで売れるために必要なマーケティング
経済産業省の統計によると、近年、越境ECの市場規模は拡大傾向にあります。2020年の、日本・米国・中国の3か国間における越境ECの市場規模は、どの国の間でも増加しました。
特に中国消費者による日本事業者からの越境EC購入額は1兆9,499億円と、前年比17.8%増となり、中国は日本にとって大きな市場となっています。コロナ禍で日本国内のインバウンド需要が減少したことも背景に、これから取り組む事業者も多いでしょう。
このように越境ECに取り組む理由はそろっており、多くの日本企業が参戦していますが、出店後に継続的に売り上げを上げ続けるには、マーケティング戦略に基づく計画的な施策が必要です。
とはいっても、むずかしく考える必要はありません。各国のユーザーに寄り添う施策を行っていくことで、確実に売上を上げていくことができます。
2.越境ECのマーケティング戦略
越境ECでマーケティングを実施する際には、主に次のようなマーケティング施策が考えられます。それぞれ戦略的に実施する方法をご紹介します。
2-1.コンテンツマーケティング
コンテンツマーケティングとは、コンテンツ、いわゆる広告ではなく、顧客に役立つ価値のある情報を用いてマーケティングを行うことを指します。コンテンツマーケティングと広告の違いについてわかりやすい例でいえば、化粧品の使い方をSNSで配信するのはコンテンツマーケティングであり、化粧品の割引販売情報をSNSで発信するのは広告といえます。
コンテンツマーケティングの目的は、商品やサービスを積極的に売るのではなく、集客及び既存顧客のファン化のためなどを目的に、生活者や顧客に対して有益となる情報を発信することを指します。積極的に売り込むのではなく、長期的な関係を維持するほうに重点が置かれます。
越境ECにおいても活用できます。越境ECでは、海外の生活者や顧客にとって「日本の商品」というのはある程度、異質なものです。そこで親しみを持ってもらい、信頼感を醸成するためにコンテンツマーケティングは重要となっています。ただ売り込むだけでなく、広告とは別にコンテンツマーケティングで現地の人々との距離を縮めるのに有効です。
2-2.バイラルマーケティング
バイラルマーケティングとは、「バイラル=viral(ウイルス性の)」という意味からきており、人から人へとウイルスが観戦するように拡散されていくという意味合いがあります。SNSで口コミを拡散させる施策が一般的です。
日本国内でも口コミ拡散は重要視されていますが、海外でも自社の越境ECに注目してもらうために有効です。SNS上で、現地の人が自社サイトや商品の良い口コミを投稿してもらい、拡散することで認知度や好感度の向上が見込めます。
2-3.インフルエンサーマーケティング
バイラルマーケティングの一環となりますが、ネット上で大きな影響力を持つインフルエンサーを味方につける方法です。インフルエンサーにSNSなどで商品を紹介してもらうことで、商品のPRを行う手法です。
インフルエンサーのフォロワーなどが「憧れのインフルエンサーと同じ物を使いたい」「好きなインフルエンサーが勧めていたから興味がある」などと興味を抱き、より深く、強く商品を印象付けることができます。
3.中国越境ECのマーケティング施策
特に中国越境ECに取り組む際には、次のマーケティング施策を実施するのがおすすめです。その理由と共にそれぞれの概要をご紹介します。
3-1.自社SNSアカウント運用
中国では、WeChat(微信・ウィーチャット)をはじめとしたSNSの利用率が高く、CNNICの「第45回中国インターネット発展状況統計報告」によると、2020年3月時点のモバイル向けインターネットサービスの利用者のうち、「インスタントメッセージ」の利用者は約89万人で、全体の99.2%です。
特にWeChat(微信・ウィーチャット)は現在中国で最も利用されているSNSです。提供しているテンセントが発表している2020年9月までのデータによると、月間アクティブユーザーは12億人超えとその規模は非常に大きいことが分かります。
そのWeChat(微信・ウィーチャット)上に企業アカウントを作成し、自社アカウント運用を行うことで、生活者とコミュニケーションを取ることができます。
自社の商品やサービスの新情報やクーポンなどの割引情報の発信や、コンテンツマーケティングとして有益な商品使用術やブランド動画などを配信することも可能です。
サービスによってはWeChat(微信・ウィーチャット)上に越境ECサイトを立ち上げ、WeChat(微信・ウィーチャット)自体を越境ECプラットフォームとして活用することも可能です。
3-2.KOLマーケティング
中国では、「KOL(Key Opinion Leader)」と呼ばれる、SNS上で影響力の高い、多くのフォロワーを持つインフルエンサーが存在します。中国ではライブ配信で商品を紹介・販売するライブコマースが活発化しており、KOLマーケティングでも活用されています。食品や衣料、化粧品などのジャンルが特に注目されており、KOLマーケティングの実施どころといえます。
日本企業が中国でKOLマーケティングを実施する際には、目的を明確化することが成功のカギとなります。例えば、越境ECサイトや商品の認知拡大フェーズなのか、それともある程度、既存顧客が固まってきた段階でよりファンとの絆を深めたいというフェーズなのかなどによって目的が変わり発信方法も変わってきます。中国人生活者のインサイトを深堀し、その上で戦略的に実施していくことが重要です。
3-3.SNS内・モール内広告
SNSや越境ECモール内に広告を出すというのも一つのマーケティング施策となります。例えば、WeChat(微信・ウィーチャット)内で公式広告を打つことが一つの例です。
実際、WeChat(微信・ウィーチャット)内に広告を出して自社アカウントに1万人以上mノフォロワーが集まり、新作情報やクーポンなどを配信したり、広告を通してブランディングを実施したりして認知度を挙げている事例もあります。
中国のSNS内で広告を配信する際には、自社アカウントでコンテンツマーケティングや越境EC販売などと共に実施することで、より効果を出すことができます。
4.まとめ
コロナ禍で越境ECが活性化する中、各国の中でも中国は日本企業にとってねらい目といえます。そうした中、継続的に売り上げを上げ続けていくためには、マーケティング施策が欠かせません。各国に適したマーケティング施策を実施することが重要です。特に中国では、自社SNSアカウント運用、KOLマーケティング、SNS内・モール内広告がおすすめの施策です。