1.コロナ禍によるインバウンド事業を行う日本企業の状況
訪日ラボが、読者やメルマガユーザーに対して2020年4月28日~2020年5月2日に実施したアンケート調査結果で、自社のインバウンド関連の事業について、新型コロナウイルスに関する影響を受けているかどうかを尋ねたところ、80.9%が「すでに大きな影響を受けている」と回答しました。
どのような影響を受けているか聞いたところ、「訪日外国人の来客、宿泊、利用の減少」が60.0%と最も多く、次いで「インバウンド関連事業の売上減少」が50.9%、「インバウンド関連イベント・セミナーの出展・参加中止」が30.0%と続きました。
多くの企業がインバウンド事業で大きな影響を受けていることがわかりました。特に来客数の減少が大きく影響を受けた要因となっていることがわかります。
2.インバウンド事業低迷への対策
同調査結果では、こうした大きな影響を受け、どのような対策を実施しているのかも分かります。
トップ3は「新型コロナウイルスの国内・海外の感染状況などの情報収集」65.5%、「業務のテレワーク化」49.1%、「インバウンド関連事業の事業計画の見直し・KPI(目標数値)の再調整」41.8%となりました。
多くの企業は、現状を知るためにリサーチをメインに行いながら、テレワークや見直し、目標調整など状況に合わせた取り組みを実施していることが分かります。
特に欲しい情報は、「競合他社・他業種の対策事例」56.0%、「世界各国からの日本の感染状況に関する評価、目線、意識など」55.0%、「世界各国の出入国制限に関する最新情報」51.4%となり、事例が多く求められているようでした。
3.【2024年】インバウンドの回復について
2024年のインバウンド(観光客誘致)の回復状況は、コロナウイルス感染症のパンデミック以降、各国の旅行制限緩和により、国際旅行の需要が再び高まりつつありますが、完全に回復したとは言えない状況です。アジア、ヨーロッパ、北米などの主要市場からの訪問者数が徐々に増加している一方で、旅行者の行動様式や安全に対する意識も変化しています。
旅行業界や飲食業界は、非接触型サービスの導入やオンラインでの事前予約システムを導入することなど、デジタルトランスフォーメーションを推進しています。
政府や地方自治体も、インバウンド回復のためのキャンペーンを積極的に展開しています。また、観光振興策として、ビザ発給の簡易化や税制優遇、プロモーション活動を強化しており、インバウンド需要は着実に回復しております。
3-1.中国人観光客のインバウンド回復傾向
中国人観光客のインバウンド需要は、2024年に入り回復傾向にあります。中国政府が国際旅行の制限を緩和したことで、海外旅行を再開する国民が増加しています。特に、日本の伝統的な人気観光地や新しい観光スポットへの関心が高まっており、中国人旅行者による経済的影響も大きくなっています。
観光業界は、中国市場のニーズに合わせたサービスの提供を強化しており、言語サポートの充実、支払いシステムの多様化、文化的な接点を生かしたプロモーションを展開しています。また、SNSやデジタルマーケティングを活用した情報発信も積極的に行われており、中国人観光客の関心を引きつけ、訪問を促しています。
3-2.飲食店へのインバウンド回復の影響
インバウンド観光の回復は、飲食店にとって大きな好影響を与えています。国際的な旅行制限の緩和とともに、外国人観光客の流れが再び増加し、特に観光地周辺や大都市内の飲食業界がその恩恵を受けています。これにより、多様な文化的背景を持つ顧客を引き付けるために、メニューの国際化や多言語対応のメニュー表の提供が増えています。
飲食業界のインバウンド対策では、特にソーシャルメディアを活用したプロモーションが効果を発揮しており、訪日外国人を対象としたイベントや割引キャンペーンが増加しています。これにより、外国人観光客が積極的に地元の飲食店を訪れる動機付けがされており、売上向上に貢献しています。
4.インバウンド事業の対策事例
実際、日本企業はインバウンド事業の対策として、どのようなことを実施したのでしょうか。その事例をいくつか見ていきましょう。
4-1.顧客とのオンラインでのコミュニケーション
直接、訪日外国人との対面コミュニケーションが取れない今、アフターコロナでいかに戻ってきてもらえるかが重要になっています。
その中でも、顧客との接点はオンラインで継続するという方法を取った事業者がいます。ゲストハウスでアフターコロナにたこ焼きパーティーなどの交流を企画するなど、魅力ある特別企画を作り、今からオンラインでアフターコロナに来日したくなるようなコミュニケーションを取った事例があります。
アフターコロナの集客に備え、観光や自店舗をPRするためのWEBサイトの構築や観光地の魅力を伝えるコンテンツや動画をSNSなどで情報配信する施策も考えられます。
4-2.集客方法の見直し
集客を大手旅行サイトなどに頼っていた場合、集客方法を見直し、自社自身のアイデアで魅力的なプランを企画し、自身の力で自社のホームページから惹きつけ、予約を獲得するということを計画した企業の対策事例もあります。この企業はコロナ禍をきっかけとして、さまざまなことを反省し、アフターコロナの集客強化につなげる計画を実施しています。
4-3.感染予防策を積極的に実施し、来客に安心感を持ってもらう
インバウンド業界に限らず、世界的に観光業や小売業、飲食業などでは、来訪者に対して健康確認や体温測定などさまざまな感染対策を実施しています。
実際、2020年5月11日に約3ヶ月半ぶりに営業を再開した上海のディズニーランドでは、入場者数の制限のほか、体温検査と身分証明書の提示、マスク着用が入場・利用の必要条件としました。こうした対策は来訪者に安心感を生みます。日本のインバウンド業においても、インバウンドが戻ってくる頃には、こうした感染対策を行う準備が必要となりそうです。
5.越境ECで売上をカバー
こうした事例のほか、その他に考えられることとして、オンラインを活用して、越境ECで商品を販売するということがあります。
すでに多くのインバウンド関連事業者が早急に越境ECに着手し、取り組んでいます。
特に中国越境ECにおいては、自社ECサイトの新規構築や越境ECモール新規出店などのハードルが高いことから、中国最大のSNSのWeChat(微信・ウィーチャット)上でECサイトを構築できるソリューション「ShopCN(ショップシーエヌ)」を利用するなど比較的ハードルの低い方法もあります。
ShopCNとは、WeChat(微信・ウィーチャット)の公式アカウント上に、 API で連携、自社越境 EC サイトを構築できる日本初の越境EC構築システムです。日本企業の中国マーケットへのビジネス展開をサポートします。
6.まとめ
コロナ禍により日本のインバウンド事業は大きな打撃を受けました。訪日ラボが2020年4月末から5月初旬にかけて行ったアンケート調査によると、80.9%の企業が「大きな影響を受けている」と回答し、主な影響として訪日外国人の減少や売上減少、イベント中止が挙げられました。
このような状況下で、各企業はさまざまな対策を講じており、情報収集やテレワークの導入、事業計画の見直しが主な対策として実施されています。特に競合他社の対策事例や世界各国の出入国制限に関する最新情報が求められており、情報収集が重要な役割を果たしています。
インバウンド需要は徐々に回復しておりますが、完全な回復には至っていません。旅行業界や飲食業界はデジタルトランスフォーメーションを推進し、非接触型サービスやオンライン予約システムの導入を進めています。政府や地方自治体もビザ発給の簡易化や税制優遇、プロモーション活動を強化しており、インバウンド需要の回復に向けた取り組みが進行中です。
特に中国人観光客のインバウンド回復が顕著であり、観光業界は中国市場に特化したサービス提供やデジタルマーケティングを強化しています。飲食業界でも多言語対応やメニューの国際化が進み、ソーシャルメディアを活用したプロモーションが効果を発揮しています。