1.中国越境ECの物流の基本
中国越境ECに取り組むために、まず決める必要があるのが「日本国内で製造した商品をどこから、どのようなルートで、どのように中国カスタマーのもとに届けるか」という点です。この物流について、中国越境ECにおいては次の3つのモデルがあります。
1-1.直送モデル
ECサイトに中国在住の消費者から注文が入ったときに、日本から商品をEMS等の国際宅配便を利用して、直接配送する方法です。税金については消費者が直接、「行郵税」という税金を負担します。直送なので商品を保管しておく倉庫保管コストが不要ですが、届けるまでに期間を要することから、小規模な越境ECに向いています。
1-2.保税区モデル(倉庫留め)
注文が入る前に、中国の保税区に商品をまとめて送っておき、保管しておきます。ECサイトを通じて商品に注文が入ったら、通関手続きをして配送します。中国国内から出荷するため、輸入にかかる諸税に関しては、販売者側が納付します。
この保税区モデルは倉庫の管理コストがかかりますが、大量の商品を一括配送して中国国内に保管しておくことができるため、大規模な越境EC事業者にとってコスト削減が期待できます。
1-3.保税区モデル(通過)
この方式は、中国保税区にある倉庫から消費者宅に国内配送することや、税金のしくみは、保税区モデル(倉庫留め)とまったく同様です。しかしこの方式は、ECサイトへ注文が入った時点で、日本から中国の保税倉庫に商品を送り、その後、保税倉庫から中国国内の消費者宅に配送します。つまり、直送モデルのルートに、保税倉庫を通過させる工程を挟んでいます。直送モデルでありながら、税金は販売者側が負担することができます。
2.中国ECの物流のトレンド
中国越境ECにおいては、昨今、法改正による関税制度の変更がありました。中国越境ECに取り組む際には、物流についてのニュースやトレンドを追っていく必要があります。中国越境ECの物流に関係する最新情報を押さえておきましょう。
2-1.越境ECの新制度が2019年1月1日から施行
2016年4月8日に中国政府が導入した、越境ECに関する新制度が、2019年1月1日から施行されています。これにより、関税にも影響があるため、物流にも影響が出ています。新制度の主な注目ポイントをご紹介します。
●「電商税」の施行
保税区モデルでの越境EC輸入を行うことができる保税区を、越境EC総合試験区として認可し、越境ECとして認められる場合は、各税金を次の課税率にするという優遇措置として電商税が設けられました。
関税率:0%
増値税:法定税率の70%
消費税:法定税率の70%
●取引限度額の拡大
上記の優遇措置の適用対象となる取引限度額が拡大されました。
従来
「1回の取引金額2,000元以内、かつ、個人の年間取引金額合計2万元以内」
新制度
「1回の取引金額5,000元以内、かつ、個人の年間取引金額合計2万6,000元以内」
●ポジティブリスト掲載の品目のみ取引可能に
保税区モデルでの取り扱い可能品目がポジティブリストとして公開されており、ここに掲載されているもののみが越境ECで取引できることになりました。このリストに掲載されていない品目を輸入する場合は、「一般輸入」の扱いになります。つまり、電商税の優遇措置は適用されず、関税、増値税、消費税が課税されることになります。
【参考】2018年11月発表のポジティブリスト
http://gss.mof.gov.cn/zhengwuxinxi/zhengcefabu/201811/P020181129612836698037.pdf"
2-2.物流サービスのIT化
近年、中国ECにおいては、物流の効率化やIT化がどんどん進んでいます。この流れに乗り、中国越境ECに取り組む日本企業も中国への物流サービス専門業者などを活用して物流を効率化しています。物流サービスにIT技術を活用し、物流をシステム化して管理することはもはや当たり前になっています。
越境ECといえば、送料や関税の支払いなどが煩雑で、さらに在庫管理も必要になります。すべてシステムを活用して効率的に処理することでコストを抑えられます。業務効率化が叶えば配送スピードも上がるため、日本から約1~2週間で配送するサービスもあります。
3.まとめ
中国越境ECの物流は今、効率化が進んでおりどんどんスピードアップしています。新制度が施行された今こそ、中国の物流についての知識を深め、中国越境ECに力を入れる良きタイミングといえます。