1.越境ECの全体的な市場比較
米国、中国、日本については、経済産業省が越境EC の購入額の統計を取っており、市場規模を把握することができます。
出典:経済産業省「日本・米国・中国の3か国間における越境電子商取引の市場規模」(平成29年)
上記の表をみると、中国は3ヶ国中、非常に市場規模が大きいことが分かります。まず中国消費者による日本事業者からの越境EC購入額は1兆2,978億円で前年比25.2%増と伸びています。日本事業者は中国越境ECが順調ということです。
また中国消費者による米国事業者からの越境EC購入額は1兆4,578億円、前年比28.2%増であり、中国消費者は日本、米国問わず越境ECを多く利用していることが分かります。
一方、市場規模が小さい国といえば、日本です。日本人消費者が中国越境ECで購入する額が最も低い値になりました。米国越境ECにおいても低い数値であることから、日本の事業者は越境ECに乗り出しているものの、日本人の消費者は、越境ECにはあまり興味がないことが分かります。
2.各国の越境ECの市場の特徴
さらに詳しく各国の越境EC市場の特徴についてみていきましょう。
2-1.米国
年二桁台の伸びで拡大する米国国内EC市場では、アマゾンが4割のシェアを持ち、越境ECの利用も増加傾向にあるといいます。
統計調査会社スタティスタの2016年のアンケート調査によると、18歳から49歳のインターネット利用率は96%となっており、非常に高い状況となっています。
また、越境ECにおいては、徐々に利用率が上昇しています。デジタル市場分析会社コムスコアの2017年第1四半期の調査では、米国人消費者が海外店舗のECサイトを利用した利用率は、2016年の43%から2017年には47%になりました。
米国市場にアプローチしている日本企業の中では、楽天が自社海外向け販売サイトを通じて、販売増となっています。日本から楽天グローバルマーケットに出品している商品で、米国で販売実績の良い商品は、主に日本のスポーツ用品や化粧品、高級バッグなどです。
2-2.日本
日本においては、先の米国と中国との比較でも分かる通り、他国と比べて越境ECはそれほどさかんではありません。つまり、日本人はあまり他国の商品を積極的に購入していないということです。
株式会社三菱総合研究所 情報通信政策研究本部が2015年7月に実施した、日本の20~79歳男女5,000人に対する「越境ECに関するアンケート調査」では、海外のホームページからの購入経験については78.1%が「購入したことがない」と答えています。
また、海外ホームページでの購入内容については、「衣料品」がトップで最も多く、次いで、「書籍、音楽CD等」となっていました。
海外ホームページで購入したくない理由の問いに対する答えとしては、「事業者が信頼できるか分からないため」(47.0%)、「料金の決済に不安がある」(45.9%)、「商品の品質に不安があるため」(37.3%)、「模倣品、偽造品である可能性がある」(34.8%)が上位を占めていました。この結果からは、日本人にとって、越境ECをはじめとした海外製品を、インターネットを介して購入するということは、まだまだ信頼面、品質面、料金・言語の点でハードルが高いと考えられます。
2-3.中国
中国においては、先にも述べた通り、越境ECで日本製品も米国製品も積極的に購入されています。
ジェトロが2018年8月に行った「中国消費者の日本製品意識調査」によると、越境ECでの日本の輸入品購入経験について、「ある」と答えたのは65.3%となっていました。また、越境ECで商品を購入する理由として、トップは「中国内では店頭で販売されていない商品だから」で69.1%、次いで「注文してから商品が届くまでの時間が短いから」が45.0%、「ニセモノではないから」が42.6%と続いています。
中国においては、大いに品質などに信頼のおける日本製品を買いたい意向があるのが前提であるのに加えて、最近では「早く届く」といった利便性も感じているようです。
3.越境ECの今後の市場の行方
今後の越境EC市場は、どうなっていくのでしょうか。
経済産業省の「平成29年度我が国におけるデータ駆動型社会に係る基盤整備(電子商取引に関する市場調査)」によると、2017年の世界の越境EC市場規模は5,300億米ドルとなっており、前年と比べた成長率は32.5%となっていました。このことから、2020年まで対前年比20%台の成長率が見込まれており、2020年には9,940億ドルになると予測されています。
4.まとめ
各国の近年の越境ECについてみてきました。世界的に越境ECの市場規模は順調に伸びており、中国における越境ECは、他国と比べても非常に活発であることは明らかです。また、越境ECにおいて日本製品のニーズが高いことは、やはり見逃すことはできない傾向であるといえます。