今、世界のEC市場の規模は拡大の一途をたどっています。中でも、中国のEC市場は、大きな拡大を見せており、ECサイトを通じて日本から買う「越境EC」利用も増えています。中国EC市場は、日本にとって今、非常に注目に値する市場であるといえます。
そこで、今回はとくに中国の「越境EC」に焦点を当て、日本企業が中国越境ECに取り組むべき理由をご紹介します。
1.注目を集める越境EC~中国・米国
今、世界各国のEC市場が伸びを見せています。中でも中国EC市場は世界と比べても大きく伸びています。また、日本企業も参戦の余地がある越境ECが拡大している点についても知っておきたいところです。現状を確認しておきましょう。
1-1.中国EC市場の拡大
世界でEC市場が伸びている背景には、ネット人口の増加に伴い、電子商取引における決済機能や物流システムの発達、インフラ整備などがあります。また、越境ECの機会が増えたことも、世界中のEC市場が伸びている理由といわれています。
「eMarketer Dec2018」のデータによれば、2018年の世界の各国別BtoC-EC市場規模は、中国が15,267億ドルでトップ。次いで、米国で5,232億ドルでした。
中国では2017年に11,153億ドルとなっており、米国の2017年の4,549億ドルと比べても成長率は大きくなっています。
中国EC市場は、市場そのものが大きい上に、拡大の幅も広くなっています。
世界の各国別BtoC EC市場規模成長率(2017年/2018年)(単位:億米ドル)
出所:eMarketer Dec2018より作成(旅行、チケットを除いた金額)
1-2.世界の越境EC市場規模の比較
では、越境EC市場で比較した場合、どうでしょうか。経済産業省による2018年の推計結果では、中国において日本と米国から購入する越境EC市場の規模は32,623億円にも上っています。これは前年比18.4%です。一方、米国は13,921億円、日本は2,765億円で、ここでもまた中国が差をつけています。
中国における日本からの購入額は15,345億円で前年比18.2%増しとなっており、日本が中国への越境ECへ取り組むことは、成果に期待ができる可能性を感じます。
越境EC市場規模(2018年)
(単位:億円)
出所:各種調査機関、文献および越境ECを行っているEC事業者ヒアリングより作成
2.中国越境ECに取り組むべき4つの理由
中国越境EC市場が拡大していることは、日本企業にとって、大きなチャンスといえます。そこで、さらに日本企業が中国越境ECに取り組むべき理由を4つ、具体的に見ていきましょう。
2-1.新型コロナウイルス拡大による影響
新型コロナウイルス感染拡大を受け、世界的にECに注目が集まっており、売上向上のニュースをよく耳にするようになりました。欧米及び中国では、店舗でのショッピングから急激にオンラインショッピングへとシフトしているといわれています。
また、インバウンドの減少による影響を埋めるためにも、越境ECに転じて取り組む日本企業も多くあります。
このような中で、どの企業も越境ECに取り組むことは有益な結果につながると考えられます。
2-2.越境ECの市場規模~中国VS.米国
日本企業が越境ECに取り組む場合、市場の大きい中国と米国が候補に挙がりますが、先にご紹介したように、経済産業省の2018年の推計値では、中国から日本の越境EC経由で購入した額のほうが、米国から日本の越境EC経由で購入した額よりも、大きくなっています。
商品特性やターゲットにもよりますが、日本商品の越境ECに取り組むのであれば、まずは中国を優先すべきかもしれません。
2-3.中国における越境ECの税制変更
2016年4月、中国政府が越境ECの税制変更を行い、一度の購入金額の上限は2,000元に引き上げられました。大きく変わったのは、税率です。購入金額の上限以下の購入商品に対して、消費税は30%減額になるなどの規定が設けられました。
このことは、日本の実店舗での購入よりも、「ネットで買ったほうが安い」といった状況を生み出しています。低額商品は実質増税になりますが、一般貿易に課せられる税率と比べれば差があるため、越境ECのほうにメリットがあると考えられます。
中国越境ECに取り組むことは、税制変更の点でもタイムリーなことといえます。
2-4.日本における国内市場の縮小
日本の少子高齢化による人口減少は、国内市場の縮小の要因となり得るといわれています。
総務省統計局の「日本の統計」の「人口の推移と将来人口」によれば、平成23年からずっと減少し続けています。
平成30年は約1億2,644万人でしたが、この調子でいけば、約10年後の令和12年には約1億1,912万人、約35年後の令和37年には約9,744万人にまで減少するという推計が立てられています。
このことは、さらに今後、国内市場が縮小していくことを想像するに難くありません。
これにより、早期から、国内だけでなく海外市場へと目を向け、開拓していくことが重要であるといえます。
3.まとめ
中国ECは、世界的に見ても飛躍的に拡大しており、日本企業が着手すべきものといえます。その理由として、新型コロナ感染拡大を受け消費者が急激にECへ流れていること、越境ECへの税制変更など、中国越境ECへの可能性が広がっていることや、国内市場の縮小が今後も想定されることなどがあります。
今、中国ECに取り組むことは、多くの企業にとって急務であり、同時に、絶好の契機といえます。
参考:中国越境ECの基礎知識
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