1.飲食店がインバウンド対策を行うメリット
飲食店がインバウンド対策を行うメリットとして、売上増大に繋がる点があげられます。インバウンドの観光客は客単価が高い傾向があり、団体や複数人で来店することも多いため、客単価と来店者数の増加が期待できます。さらに、インバウンドの観光客による口コミが海外で拡がると、今後の訪日観光客の集客にも繋がり、長期的な売上増大も見込めます。
また、インバウンド対策をきっかけに自店舗のサービスやメニューを見直すことで、訪日観光客だけでなく国内からの来店者に対するサービス向上も期待できるでしょう。
【参考】
2.中国人インバウンドにとっての日本の飲食店の魅力とは?
中国人インバウンドは日本に訪れたときには飲食店をよく利用しています。
2018年12月に日本貿易振興機構(ジェトロ) が発表した「中国の消費者の日本製品等意識調査」では、「日本でしたいこと」の1位と2位は「買い物」(59.8%)と「食事」(59.7%)が並びました。食事を期待して日本に訪れる中国人インバウンドは多くいることがわかります。
では、日本の飲食店の利用実態やどのようなイメージを持っているのか確認しておきましょう。
平成31年3月に発表された三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社の「平成30年度 食によるインバウンド対応推進委託事業(お土産市場行動調査事業)報告書(農林水産省委託事業)」によれば、訪日中の飲食店の利用状況として、訪日中国人からは
「和牛、寿司、カニ、火鍋などを食べた。」
「銀座で和牛の焼き肉、新宿では鉄板焼きを食べた。」
「大阪ではラーメン、沖縄では琉球ビーフをそれぞれ食べた。他にもいろいろ食べた。焼きたてのホタテはおいしかった。」
などの声が挙がっており、日本ならではのその地方の食を楽しんでいるようです。
食事場所としては、ホテルや中華料理店、居酒屋、個人経営の飲食店、駅前のデパートや商店街の飲食店で食事したという声のほか、夜はスーパーで食べ物を購入して宿泊施設で食べたという人もいました。
また、利用時に飲食店を選ぶ基準として「味が良いこと」「コストパフォーマンスの良さ」「知名度の高さ」「口コミ評価」「待ち時間の短さ」を重視している人がいました。
食材の産地については「こだわっていない」という意見が多く、中には「日本の食品衛生を信頼しているため、産地は気にしていない」という声も複数挙がりました。
中国人インバウンドは日本食を楽しむために、口コミをはじめとしたさまざまな基準から飲食店を選び、衛生面については特に安心して利用していることがわかります。
3.飲食店におすすめのインバウンド施策
飲食店がインバウンド集客を行ううえで効果的な施策を3つご紹介します。
3-1.外国語対応のメニューの設置
飲食店などの店舗において、欠かせないのが外国語での接客対応です。インバウンドの観光客への応対やメニュー、案内看板に英語や中国語を使用することは必須です。特に飲食店では、アレルギーや宗教的な理由で避けられる食材などは、メニューに明記することで安心感にもつながります。また、文字だけでなく写真を使用すると、より理解しやすくなります。
3-2.キャッシュレス決済の導入
インバウンド集客のために、観光客が良く使う決済方法の導入することをお勧めします。多くの国では日本に比べてキャッシュレス化が進んでおり、クレジットカードやスマホ決済を利用することが多くあります。店頭やホームページに利用できる決済方法を記載することも重要です。
【参考】
3-3. Wi-Fi環境の整備
インバウンド対策として、無料Wi-Fiの設置も重要です。インバウンドの観光客は、現地での情報収集やSNS更新などにWi-Fiを利用します。満足度の向上やSNSへの口コミ投稿にもつながるため、Wi-Fi環境を整備しておきましょう。
4.飲食店が中国人インバウンドを集客するには?
中国人インバウンドにとって日本の飲食店は好印象です。集客に力を入れることは意味がある行為といえます。
では、具体的にどのような方法で集客していくのがいいのでしょうか。ここでは有効な方法を2つご紹介します。
4-1.中国人インバウンドが見るサイトに飲食店の情報を掲載する
中国人インバウンドは、口コミを大いに参考にするところがあります。先の報告書では、参考にした情報に関する訪日旅行経験者の発言として、
「訪日前に『大衆点評』で飲食店の情報を収集した」
「訪日前に『大衆点評』等を活用し、観光地近くの飲食店を検索した」
「大衆点評に掲載されている飲食店はクーポンを提供している場合が多い。また、数は少ないものの一部の店では、大衆点評から予約できる」
など、「大衆点評」という世界中の店舗情報と消費者によるレビューを掲載する中国最大の生活情報アプリを利用する人が多く見られます。
この大衆点評は基本的にユーザーが企業・店舗を登録し、そこに口コミ投稿をするものですが、企業が登録申請すると自店の情報を編集できるようになります。中国人インバウンドがよく閲覧する情報サイト上のページをきちんと情報整理された状態にすることは、集客に大きく影響があると考えられます。
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4-2.中国人客に飲食店の口コミをしてもらう
また中国人インバウンドは口コミを重要視することから、企業発信の情報だけでなく利用者に口コミをしてもらうよう促して、良質の口コミを増やすことも重要な施策です。
ショップカードを渡す、写真映えするコーナーを作って撮影してもらい、SNSへと投稿してもらう、口コミサイトに書き込んでもらうといった店舗における取り組みはおすすめです。
5.飲食店が利用できるインバウンド対策の補助金
日本政府や地方自治体が提供しているインバウンド需要拡大に対応するための補助金制度があります。具体的な内容は各制度や募集期間により異なりますが、ここではその一部を紹介します。
東京都の「インバウンド対応力強化支援補助金」では、都内の飲食店などに対して1店舗あたり最大300万円の補助金を提供する制度があります。対象の事業としては、多言語対応(ホームページ等の多言語化、多言語対応タブレットの導入等)やクレジットカードや電子マネー等の決済機器の導入などがあります。
また、その他の地方自治体でも、地域の特性や季節性を活かしたインバウンド対策を行う事業者に対する補助金制度がありますので、利用できる補助金があるか各自治体のウェブサイト等で確認するのも良いでしょう。
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6.中国人インバウンド集客に成功した飲食店の事例
ではここで、中国人インバウンド集客に成功した飲食店の事例を2つご紹介します。
6-1.老舗料理店が大衆点評で来客2割増しで好循環に
ある都内のうなぎや懐石、会席料理の老舗日本料理屋は、大衆点評を利用して中国人インバウンドの集客に成功しました。
多くの中国人インバウンド客は、このお店で食事を終えた後、大衆点評上に感想を口コミに書いてくれるといます。口コミ数が増加し、さらに店の知名度も上がり、口コミを見て来店する人が増えるという好循環が生まれています。結果として中国人インバウンド客は2割増しとなりました。
また大衆点評を見て来店した中国人客の中には、この店の味が非常に好きで中国で出店したという人まで出てきました。
【出典元】
6-2.中国人の有名人来店で口コミ増加
ある都内の火鍋専門店は、大衆点評で順調に口コミ数を増やし徐々に効果が表れてきた頃、あるとき中国人の有名人が来店しました。それが口コミとして広がり、集客にもつながりました。
大衆点評で評価されることで、ユーザーからの信頼性が高まるのを実感しているといいます。店舗側はこれからどんどん環境と料理を良くしていき、日本のおもてなしの心と馴染みの美味しい味を提供したいと述べています。
【出典元】
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7.まとめ
多くの中国人インバウンドは日本の飲食店を楽しみに訪日します。そのような中でいかに選ばれるお店であるかが重要になってきます。効果的な集客の主な方法をご紹介してきました。ぜひヒントにされてみてください。