今、中国モバイル決済サービスを導入する日本企業が増えています。現在、中国のモバイル決済市場では、アリペイ(Alipay/支付宝)とWeChatペイ(WeChat Payment/微信支付)が主流になっています。
そこで、中国ECやインバウンド向けにモバイル決済サービスの導入を検討中なら知っておきたい知識とともに、WeChatペイ(WeChat Payment/微信支付)についてはプロモーション例もご紹介します。
1. 中国のモバイル決済市場の状況
近年の中国のモバイル決済市場の状況を見てみましょう。Media Researchによると、2018年の中国のモバイル決済の年間取引規模は、前年より136.7%増して、277.4兆元(約4383.5兆円)となりました。
また易观のデータでは、中国モバイル決済のシェア率が分かります。
1位 アリペイ(Alipay/支付宝) 53.71%
2位 WeChatペイ(WeChat Payment/微信支付) 38.82%
出典:亿欧「易观发布2018年Q3移动支付市场季度监测报告」
https://legacy.iyiou.com/p/88672.html
このうち、大きなシェアを占めているのが、アリペイ(Alipay/支付宝)とWeChatペイ(WeChat Payment/微信支付)です。
この2つのモバイル決済ツールは、日本国内でもすでに、訪日中国人向けに多くの店舗に導入されています。実店舗で利用する際には、ユーザーは事前にスマートフォンに専用アプリをインストール後、銀行口座の情報を登録します。そしてレジで店員が見せるQRコードをアプリで読み込むことで、簡単に支払い・決済を行うことができます。
2.アリペイ(Alipay/支付宝)とWeChatペイ(WeChat Payment/微信支付)の概要
では、もう少し詳しくこのアリペイとWeChatペイの特徴をみていきましょう。
2-1.アリペイ(Alipay/支付宝)とは
アリペイ(Alipay/支付宝)は中国EC最大手のアリババグループによるモバイル決済で、同グループが運営するECモール「淘宝网(タオバオワン)」の公式決済として誕生しました。
現在はあらゆるECにおける決済はもちろん、リアル店舗や屋台、交通機関などでも幅広く支払いに使えるようになっています。
中国をはじめとして、世界に12億人以上のユーザーが存在するといわれています。
日本でも導入が進んでおり、2019年の年初時点で、日本におけるアリペイの加盟店が30万を突破したと公式発表されました。これは2018年と比べて約5倍の伸びだといいます。
2-2.WeChatペイ(WeChat Payment/微信支付)とは
WeChatペイ(WeChat Payment/微信支付)とは、テンセント社が提供するメッセージングアプリ「WeChat(微信・ウィーチャット)」に備わる決済機能です。
WeChat(微信・ウィーチャット)ユーザーはWeChat(微信・ウィーチャット)内に銀行口座を登録し、買い物や飲食、公共料金の支払いになど、さまざまな場面でお財布代わりに利用しています。
WeChat(微信・ウィーチャット)は月間アクティブユーザーが11.3億人を超える中国で最も普及しているSNSです。そのWeChat(微信・ウィーチャット)で手軽に決済ができることから、2013年のリリースから順調にユーザー数を増やしています。
WeChatペイ(WeChat Payment/微信支付)の世界のユーザー数は2019年7月時点で、8億以上といわれており、使える地域は49を超えています。
日本でも多数の加盟店が採用しており、2018年6月から2019年までの1年における決済件数は108%増、使える加盟店数は665%増と大幅な伸びを示しています。
日本では、小売店のほか、ドラッグストア、国際空港、コンビニエンスストア、飲食店などで導入されています。
3. アリペイ(Alipay/支付宝)とWeChatペイ(WeChat Payment/微信支付)の強み
次にアリペイ(Alipay/支付宝)とWeChatペイ(WeChat Payment/微信支付)それぞれの普及している場所や強みについてご紹介します。
3-1. アリペイ(Alipay/支付宝)の強み
アリペイ(Alipay/支付宝)は、もともと中国ECにおいて「エスクローサービス」で人気が上がったオンライン決済サービスです。エスクローサービスとは、ECで購入した商品がユーザーの自宅に届いてはじめて、その代金がアリペイ(Alipay/支付宝)から店舗へ入金されるしくみのことです。EC利用者にとって、商品未達の問題などが起こった場合、代金が返金される安心のシステムです。
こうした背景もあり、アリペイ(Alipay/支付宝)は中国ECに強みを呈していましたが、近年は実店舗でも決済手段として導入するところが急増しています。
すでに日本の大手百貨店や家電量販店、ドン・キホーテや各種コンビニエンスストアなどには導入済みです。
また日本では2017年1月末頃、コンビニエンスストアやタクシーの大手会社が「春節(旧正月)」に合わせ、こぞってアリペイ(Alipay/支付宝)を導入しました。
3-2. WeChatペイ(WeChat Payment/微信支付)の強み
一方、WeChatペイ(WeChat Payment/微信支付)は、当初、中国においてコンビニエンスストアやレストラン、駐車場などの多くの実店舗で導入されており、オフラインにおいて強みがあるといわれてきました。
日本においても、総合免税店や宝飾品店、ブランド品店などの店舗で2016年8月頃に相次いで導入されました。また、同時期にはファッション大手のラコステジャパンが直営店9店舗に導入しました。
しかし現在ではオンライン決済でも普及しています。
WeChatペイ(WeChat Payment/微信支付)の1番の強みは、WeChatペイ(WeChat Payment/微信支付)の決済機能であることから、訪日中国人ユーザーが実店舗での決済時に、自店舗のWeChat(微信・ウィーチャット)公式アカウントのフォロワー化を促進できる点にあります。
フォロワーになってもらうことで、自店舗のキャンペーン情報などを配信することも可能であることから、WeChatペイ(WeChat Payment/微信支付)の利用を通じて、より多くのユーザーとの出会いが生まれます。
4. WeChatペイ(WeChat Payment/微信支付)導入と合わせて実施したいWeChat(微信・ウィーチャット)プロモーション
WeChatペイ(WeChat Payment/微信支付)は、チャットアプリのWeChat(微信・ウィーチャット)と連携させてプロモーションを実施していくことで、さらに効果が期待できます。
訪日中国人が日本に滞在中に大いに活用するといわれているツールであることから、WeChatペイ(WeChat Payment/微信支付)の決済方法を導入するのと同時に、WeChat(微信・ウィーチャット)の公式アカウント上で、次のような方法でユーザーとのコミュニケーションを行い、インバウンドプロモーションを行うとさらに集客につながるでしょう。
例えば、次のような方法があります。
4-1. WeChat(微信・ウィーチャット)でキャンペーンを実施しクーポン配布
WeChat(微信・ウィーチャット)の公式アカウントではキャンペーンを実施できます。抽選でクーポンをプレゼントするなどして、実店舗へと誘導することもできます。その際、WeChatペイ(WeChat Payment/微信支付)に対応していることも周知すれば、来店率が高まるでしょう。
4-2. KOLなどのインフルエンサーに口コミ発信してもらう
KOLといったインフルエンサーに、WeChat(微信・ウィーチャット)上で口コミとして、店舗の情報発信をしてもらうことで、訪日前のユーザーに効果的にアピールできます。
4-3. WeChatのシェイク機能を活用
店舗に看板を設置し、Bluetoothを用いたWeChat(微信・ウィーチャット)の「シェイク機能」を活用することもできます。例えば、店舗に設置されている看板の前で、スマートフォンをシェイクすると、リンクURLが画面上に出現し、WeChat(微信・ウィーチャット)で使えるスタンプが特別にダウンロードできるといったプロモーションを実施した百貨店の事例もあります。こうした実店舗における訪日中国人とのコミュニケーションも重要です。
4-4.ECサイトでの販促につなげる
WeChat(微信・ウィーチャット)上には、越境EC構築システム「ShopCN(ショップシーエヌ)」を利用すればECサイトが構築できます。このECサイトでの決済にWeChat(微信・ウィーチャット)を利用できるようにすることで、ECサイト利用促進、販売促進につながります。
5.まとめ
近年、中国モバイル決済サービスは次々と日本の店舗に取り入れられています。 その波に乗り、WeChat(微信・ウィーチャット)を合わせてプロモーションに活用してみるなどして、SNSとの連携を行うと、トレンドに合った有意義なプロモーションになるでしょう。
また現在は、コロナ禍を受けて、中国越境ECへ乗り出した企業も多いと思われます。モバイル決済を導入することで、さらなる販促につながるでしょう。