1.中国ECにおける電化製品
まず、中国の越境ECについてみる前に、中国ECにおける電化製品はどのような様相なのかを知っておきましょう。
北京のコンサルティング企業であるAnalysysが出した2015年度版の中国ネット通販(BtoC)報告書によると(ネットショップ担当者フォーラムより)、「家電EC市場」のシェアは1位「天猫」が42%、2位「京東」が40%とほぼ同じ割合を占めています。3位は「家電量販店」が8%となっていました。
天猫とはT-mallのことで、中国のEC最大手といわれるアリババ社による中国最大のBtoCモールです。また、「京東」は京東集団(ジンドン)の傘下にある京東商城が運営する中国のBtoCモールです。
かつて、電化製品といえば京東が得意とするところでした。京東商城はもともと電化製品の販売からスタートしたためです。しかし近年は天猫が優勢になっているようです。
2.中国越境ECにおける電化製品
中国越境ECの中では、電化製品はどのような様相なのかみていきましょう。
2-1.中国越境ECサイトから見る人気
越境ECサイトの中でも人気なのは、天猫の国際版「天猫国際」と、京東商城による「JD Worldwide」です。では、これらのうち、どちらが電化製品に強いのでしょうか。
株式会社アドウェイズが2017年に両サイトの販売データを比較調査した結果、天猫国際においては売上商品の上位4位に「デジタル製品・家電」は入っていませんでした。一方、JD Worldwideにおける「デジタル製品・家電」は「マタニティ・ベビィ」と同率1位となっていました。
中国越境ECにおいては、JD Worldwideのほうが電化製品に強いようです。
また、JD Worldwideの具体的な商品の売上ランキングをみてみると、1位、3位、10位にノートPCがランクインしており、8位にデジタルカメラがランクインしていました。
2-2.中国ECにおける日本製品
続いて中国越境ECにおいて、日本製品の電化製品はどれくらい売れているのかをみてみます。
日本貿易振興機構(ジェトロ) が2017年8月に実施した「中国の消費者の日本製品等意識調査」によると、越境ECで購入した日本の商品のうち、第4位に「電気製品」がランクインしており、31.5%を占めていました。化粧品や食品、医薬品には劣っています。
一方、「今後越境ECで購入したい商品」では、電気製品は第1位で47.6%を占めていました。現状まだ購入はしないものの、「欲しい」という思いはあるようです。
●越境ECで購入した商品
第1位 化粧品 48.5%
第2位 食品 41.6%
第3位 医薬品 35.5%
第4位 電気製品 31.5%
第5位 健康食品 27.8%
●今後越境ECで購入したい商品
第1位 電気製品 47.6%
第2位 化粧品 40.9%
第3位 医薬品 32.3%
第4位 食品 29.9%
第5位 健康食品 22.6%
出典:日本貿易振興機構(ジェトロ) 海外調査部中国北アジア課 2017年12月「中国の消費者の日本製品等意識調査」
https://www.jetro.go.jp/news/releases/2017/9c767c469d4a6467.html
【参考】
3.電化製品の越境EC事情まとめ
これらのデータを総合してみると、電化製品は中国越境EC全体では、主にJD Worldwideにおいて大いに売れていました。ユーザーたちは、より電化製品に強いところで購入しているようです。
JD Worldwideの担当者へのインタビュー記事(ネットショップ担当者フォーラム)によると、JD Worldwideにおいて日本の家電で人気なのは「美顔器」「カミソリ」「電動歯ブラシ」などを含む美容家電と健康家電だといいます。
かつて、「爆買い」といわれた頃、訪日中国人の間でよく買われていたのが、電気炊飯器などの家電製品といわれています。その背景には円安にプラスして、日本の製品が持つブランド力、品質の高さがあったといわれています。
現在に至っても、そうした日本製品の強みが残ってはいるようです。そのため、ジェトロの調査で「今後越境ECで購入したい商品」にランクインしていたのかもしれません。
今後も、この日本の電化製品の強みを守り、その強みを打ち出しつつ越境ECに取り組んでいくことが有効と考えられます。